年金制度の一元化、最低保障年金7万円、年金保険料の流用禁止、年金通帳の発行、「消えた年金」「消された年金」問題の解決に、2年間、集中的に取り組みます。
これらのマニフェストが実現できなかったばかりか、支持母体に自治労を持つことから、はじめから無理だったのではないかと以前の記事で指摘しました。
→◇ミスター年金とマニフェスト・照合たったの400万件 - 民主党政権3年3か月の研究
日本年金機構の発足を巡っても、やはり自治労の言うことを聞いて、社会保険庁で懲罰受けた職員の雇用を認めてしまう、ヘタレのミスター年金・長妻厚生労働大臣なのでした。
少し長くなりますが、消えた年金問題のおさらいから・・・。Wikipediaなどから抜粋して編集します。
消えた年金
2007年5月に国民年金など公的年金保険料の納付記録漏れ問題が発覚し、5000万件という数字とともに国民の大きな怒りを買った。そもそもは、1997年に公的年金加入者に「基礎年金番号」を割り当てて加入記録を一元管理しようと試みた際に、結婚して名前が変わったケースや単純な入力ミスなどで、記録から消えた年金が生まれたのである。政府も年金事務の当事者である社会保険庁の怠慢を批判したが、監督責任もあって7月の参院選における与党大敗の最大の原因となった。さらには、現行の年金制度への不信をさらに増大させた。国会での追及の急先鋒だった民主党の長妻衆議院議員は「ミスター年金」とも呼ばれた。・・・(略)(稲増龍夫 法政大学教授 / 2008年)
https://kotobank.jp/word/%E6%B6%88%E3%81%88%E3%81%9F%E5%B9%B4%E9%87%91-183288(コトバンク 知恵蔵)
5000万件という膨大なデータの損失とともに「キーボードを45分操作したら15分休憩」「キーボードへのタッチは1日当たり平均5000以内」等の覚書を自治労傘下の労働組合が社会保険庁長官と交わすなど、その怠慢ぶりに日本中が呆れかえりました。さらに社会保険庁職員による「未納情報の業務目的外閲覧」「個人情報漏洩」、「国民年金保険料の不正免除」、「健康保険と厚生年金保険料の滞納事業者に対する延滞金の不正減額」などの不祥事が明らかになり、国民の怒りは爆発します。
当時の安倍政権は、この「消えた年金問題」で守勢に回らざるを得ませんでしたが、2007年6月30日「日本年金機構法案」が成立し、社会保険庁の解体が決定します。
日本年金機構(にっぽんねんきんきこう、英語: Japan Pension Service)は、日本国政府(厚生労働大臣)から委任・委託を受け、公的年金(厚生年金及び国民年金)に係る一連の運営業務を担う、非公務員型(民営化ではない)の特殊法人である。(Wikipedia)
当初は、国民感情も考慮して、不祥事を起こした懲戒職員の採用を見送る予定でした。
日本年金機構 懲戒処分の867職員を不採用へ 2008/7/23
政府・与党は、社会保険庁の後継組織「日本年金機構」では懲戒処分を受けた社保庁職員867人全員を採用しない方針を固めたと、2008年7月23日付の新聞各紙が報じた。この方針を盛り込んだ新組織の基本計画を近く閣議決定する見通しという。
それによると、2010年1月発足の日本年金機構では、現在の正規職員1万3113人のうち、年金記録ののぞき見や年金保険料の不正免除などで停職、減給、戒告処分を受けた職員を採用しないことになる。このほか、無許可で労働組合活動をする「ヤミ専従」経験職員30人も、処分される可能性があるという。
https://www.j-cast.com/2008/07/23023961.html(J-CAST)
民主党は、当時この日本年金機構の発足には、反対の立場にありました。「日本年金機構に移行すると年金記録問題が有耶無耶になる可能性がある」「天下り規制の対象から除外されることで、天下り・渡りのやりたい放題となる」ことから、社会保険庁は国税庁と統合し、税と保険料を一体的に徴収する「歳入庁」の創設をマニフェストでうたっていました。
しかし、政権交代すると、年金制度の一体化などを早々にあきらめたミスター年金・長妻厚生労働大臣は方針をコロリと転換、日本年金機構を発足させます。時事通信です。
年金機構、来年1月発足へ
長妻昭厚生労働相は9月29日、前政権が社会保険庁の後継組織としていた「日本年金機構」について、予定通り来年1月に発足させる方針を固めた。税と保険料を一体的に徴収するための「歳入庁」を創設するまでの暫定的な組織となる見通し。これに伴い、社保庁は年末で解体される。
民主党はマニフェスト(政権公約)に社保庁と国税庁を統合させる「歳入庁」構想を掲げており、厚労相は歳入庁発足までの間、社保庁を存続させることも検討。しかし、年金機構では既に1000人余りの民間人職員の採用を決めているほか、発足凍結のための法案を臨時国会で成立させるのは困難なことから、機構への移行もやむを得ないと判断したとみられる。
年金機構が従来方針通り発足することで、今後は懲戒処分を受けるなどして機構に採用されない社保庁職員の処遇が焦点となる。厚労省などへの配置転換や民間企業への再就職が検討されているが、850人程度は行く先が決まっておらず、最終的に引き受け手がなければ、分限免職される。
年金機構は、非公務員型の公法人。社保庁から業務を引き継ぎ、公的年金の徴収や年金記録問題への対応などに当たる。既に1078人の民間人採用を内定し、10月末には、さらに管理職50人の採用を決める予定。(2009年9月29日配信)
https://www.jiji.com/jc/v2?id=20090916hatoyama_cabinet_14(時事)
ここで黙っていないのが自治労です。懲戒処分を受けた職員の雇用に関して長妻大臣に圧力をかけたようです。長妻大臣は、「分限免職処分の回避努力」を理由に懲戒職員の雇用に柔軟な姿勢を見せるようになります。ヘタレたわけです。
当時の記事を検索していると、労組関係者や弁護士による懲戒職員の分限免職はけしからん、と懲戒職員を擁護するページが多く見られました。サヨクが自分達の権利を守る時の結束は強いですね。長妻大臣が、抗えるはずもありません。
社保庁職員救済策、自治労受け入れへ 集団訴訟回避 2009年12月1日
年末の社会保険庁廃止を前に、長妻昭厚生労働相が公表した再就職先未定の職員の救済策について、約8千人の職員が入る社保庁最大の労働組合「全国社会保険職員労働組合」と上部組織の自治労は1日、東京都内で会見し、受け入れる方針を明らかにした。解雇される職員による集団訴訟を回避するため、長妻厚労相側と自治労側が折り合った形だ。
処分歴のある職員は約320人。救済策は、懲戒処分歴のある職員も応募できるよう厚労省の非常勤職員として200~250人を公募する。
自治労の徳永秀昭委員長は会見で、「受け皿を基本的に確保できる方向であり、了解したい」と語った。そのうえで、無許可で組合活動をしていた「ヤミ専従」問題で処分を受けた約20人には応募を自粛させ、自治労で再就職先を探す方針を示した。
しかし、自治労は当初、社保庁の後継組織として来年1月に発足する日本年金機構に懲戒処分者を一律不採用とした閣議決定について、「二重処分に当たる」などと見直しを求めていた。徳永委員長は「社保庁廃止まで1カ月を切り、受け入れなければ次善策がない」などと説明した。
今回の救済策は、長妻氏側と自治労側が水面下で折衝を重ね、ぎりぎり折り合える案としてまとめられた。徳永委員長には11月27日夜の段階で、細川律夫厚労副大臣が基本的な考えを説明していた。
背景には、それぞれ抱える事情があった。長妻氏側には、過去の処分歴をもとに機構に一律不採用とすると、民間で解雇にあたる「分限免職」の回避努力が不十分とみられ、訴訟を起こされた場合に負けかねないリスクがあった。
一方、自治労側も、集団訴訟で民主党政権を訴えることは絶対に避けたかった。連合傘下で民主党を支え、来夏の参院選比例区で組織内候補が民主党から出る中で、真っ向から政権と対立することはできないと幹部は考えていた。
このため、度重なる不祥事で社保庁への不信感が根強い国民世論を意識しつつ、解雇される職員による集団訴訟を避ける救済策を検討。2年3カ月という有期の非常勤として公募し、民間からの応募と同列に扱うことにした。ただ、救済策に応じない考えの職員もおり、100人以上が分限免職となる可能性がある。(石村裕輔、江口悟)
http://www.asahi.com/seikenkotai2009/TKY200912010516.html(朝日)
日本年金機構が始動 長妻厚労相「失敗は許されない」2010年1月4日
社会保険庁の後継組織「日本年金機構」(理事長=紀陸(きりく)孝・元日本経団連専務理事)が4日、業務を始めた。社保庁の廃止に伴って移行した非公務員型の組織で、年金の給付や保険料徴収などを担う。
この日は東京都杉並区の機構本部で発足式が開かれ、長妻昭厚生労働相が「社会保険庁は50年にもわたり、年金記録の管理を怠り、国民の期待を裏切った。背景にはお役所仕事の体質があった。もはや失敗は許されない」とあいさつした・・・(略)
http://www.asahi.com/special/070529/TKY201001040071.html(朝日)
だいたい、給料もらっていながら怠けて5000万件もの年金データを消してしまった職員をさらに雇用するだけでも疑問符がつくのに、不正にデータを閲覧したり、漏えいさせた職員まで雇用するとは・・・・?納得できません。
民主党政権が労働組合と切っても切れない関係にあることがよくわかります。政権とった早々、JRに採用されなかった国鉄労組と和解したのと同じような構図だと感じます。
→◇国労との和解で200億円 - 民主党政権3年3か月の研究