民主党政権3年3か月の研究

悪夢でした。二度と政権をとらせてはいけません。だから記録します。

◇地域主権戦略会議と地域主権戦略大綱

鳩山政権から菅政権に移ってまもなくの2009年11月17日の閣議決定で「地域主権戦略会議」が内閣府に設置され、その成果として2010年6月22日「地域主権戦略大綱」が閣議決定されます。地域主権を進めていく上の課題と具体的に必要な改革、法整備について次の10章から構成されています。内閣府のページからピックアップします。

地域主権戦略大綱  平成22年6月22日 閣 議 決 定

第1    地域主権改革の全体像

第2    義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大

第3    基礎自治体への権限移譲

第4    国の出先機関の原則廃止(抜本的な改革)

第5    ひも付き補助金の一括交付金

第6    地方税財源の充実確保

第7    直轄事業負担金の廃止

第8    地方政府基本法の制定(地方自治法の抜本見直し)

第9    自治体間連携・道州制

第10   緑の分権改革の推進

http://www.cao.go.jp/bunken-suishin/ayumi/chiiki-shuken/doc/100622taiko01.pdf内閣府

 その大綱のトップの部分です。

1 地域主権改革」の理念と定義

(1地域主権改革の意義

地域主権改革は、明治以来の中央集権体質から脱却し、この国の在り方を大きく転換する改革である。国と地方公共団体の関係を、国が地方に優越する上下の関係から、対等の立場で対話のできる新たなパートナーシップの関係へと根本的に転換し、国民が、地域の住民として、自らの暮らす地域の在り方について自ら考え、主体的に行動し、その行動と選択に責任を負うという住民主体の発想に基づいて、改革を推進していかなければならない。

 また、大綱にはこんな記述もあります。大いに同意できます。いいこと言ってます。

 「地域主権改革は、単なる制度の改革ではなく、地域の住民が自らの住む地域を自らの責任でつくっていくという「責任の改革」であり、民主主義そのものの改革である。」

地域主権戦略大綱 1「地域主権改革」の理念と定義(3)住民による選択と責任 より

 

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この図は、大綱の各課題のマイルストーンを図にして一覧できるようにされています。鳩山首相の言うように何丁目何番地が示されているわけです。仕事を進めていく上での常識なのですが、これを民主党政権がやっていることに少しびっくりしてしまいます。褒めはしません。これが普通だからです。

 

この大綱を受けて、地方自治体側の反応として当時の兵庫県知事・井戸敏三氏から発せられた書類を紹介します。します。上記の章立てに一つ一つ反応されています。各項目、主要な部分だけを抜粋してしています。

地域主権戦略大綱について  平成22年6月22日  兵庫県知事 井戸 敏三

本日、新内閣発足直後の厳しい日程のなか、今後のおおむね2~3年を見据えた改革の諸課題に関する取組方針を明らかにする「地域主権戦略大綱」が閣議決定された。

政府におかれては、以下の点に留意しつつ、大綱を踏まえ、確実に地域主権改革を推進されることを期待する。

 1 義務付け・枠付けのさらなる見直し

施設・公物の設置管理基準が条例委任されたものの、政省令等国の基準に「従うべき」とされ、地方の立法裁量が制約を受けている項目について、「参酌基準」化を図るなど、地方の自由度拡大に向けて実質的に見直すこと

 2 基礎自治体へのさらなる権限移譲

基礎自治体への円滑な移譲を進めるため、財政措置、人的支援、自治体間連携の仕組みなど必要な推進方策を一体的に検討し、早急に工程表を示すこと

 3 国の出先機関の「原則廃止」に向けた取組の推進

改革に抵抗する各省庁自らが所管する出先機関の事務・権限の「自己仕分け」を前提として検討することとされており、「原則廃止」がどこまで貫けるか懸念がある。

 4 ひも付き補助金の一括交付金

一括交付金化にあたっては、必要となる補助金総額を確保し、地方が必要としている事業の推進が阻害されることのないよう十分配慮すること。また、現行制度上の補助金に伴う地方負担分を含めた事業費全体にかかる地方財源総額を地方交付税も含めた地方財政措置により確保すること。

 5 地方税財源の充実確保

抜本的な財政健全化のためには国・地方を通じた歳入増が不可欠であり、景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させた後、消費税・地方消費税の引き上げなど、所得・消費・資産のバランスがとれた税制の抜本改革に着手すること。

 6 直轄事業負担金制度の全廃

直轄事業の維持管理負担金は平成23年度から確実に廃止すること。

また、平成25年度に整備負担金を廃止することを前提とした具体的な工程表を早期に示すこと。

 7 地方政府基本法の制定

(1) 地方公共団体の基本構造のあり方の検討

地方公共団体の組織及び運営については、憲法第92条で「地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」とされており、「住民自治」と「団体自治」が貫徹する仕組みを基本とする必要があることから、地方の意見を十分に反映させつつ、慎重に検討すること。

(2) 財務会計制度

発生主義の考え方を取り入れた予算・決算制度の検討にあたっては、発生主義の要素を加味するとしても、かえってキャッシュフローが見えにくくなるという課題に留意すること。

 8 自治体間連携における「道州制」の検討への懸念

「府県を越える広域行政課題への対応のため、『道州制』について検討の射程に入れていく」とされているが、道州制は、国が制度的に府県合併を強制する仕掛けの一つであり、地域主権の考え方に反する。何のための道州制の検討かを慎重に考慮する必要があること。

 9 緑の分権改革の推進

緑の分権改革の推進にあたっては、地域資源を活かした地域主体の地域づくりの推進に資するよう、規制緩和や財政支援を積極的に実施すること。

 10 今後の地域主権の推進

今回地域主権戦略大綱が示され、今後3年を目途とする地方分権の基本方向が定められたことが確実に具体化されることを期待する。併せて、この成果を踏まえて、地域主権戦略大綱でフォローすべく用意されていることを大いに期待したい。

地方分権こそ、21世紀の日本を切り拓く途であることを改めて強調したい。

https://web.pref.hyogo.lg.jp/governor/documents/000156444.pdf兵庫県

具体的な工程表の明示を求めている他、一括交付金として地方が必要とされる総額の確保、安定した地方財政を確保するための税制の抜本改革を求めています。国の出先機関の「原則廃止」、道州制に関しては懸念を表明しています。

井戸知事は、どちらかというとリベラル寄り、道州制反対派です。課題は多いが期待を抱いていることを感じさせる文章です。

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