公務員給与・国会議員歳費の削減を実行した野田内閣は2012年5月7日「行政改革に関する懇談会」の初会合を行います。
懇談会冒頭、野田総理はこう語ります。(議事録より)
「国会では、いよいよ明日から、社会保障と税の一体改革に関する法案の本格的な審議が始まる。一体改革の趣旨をしっかりと御説明させていただきながら、皆様の御賛同が得られるよう、全力を尽くして国家・国民のために建設的な議論をしていきたい。
この社会保障と税の一体改革と同じくらい大きな課題が行政改革である。これまでも、民主党政権下では、「行政刷新会議」を中心に行政改革に懸命に取り組んできたところであるが、より一層「身を切る」改革を行うべきという国民の声を受け、結果を出していきたい。本懇談会においては、高い御見識や豊富な経験を有する方々にお集まりいただいており、岡田副総理とともに、行政改革の理念や在り方、総人件費改革を含む具体的な課題について、大所高所からの忌憚のない活発な御議論をお願いしたい。
メンバーは次の通りです。
行政改革に関する懇談会 構成員
★稲盛 和夫 京セラ株式会社名誉会長
①岡 素 之 住友商事株式会社相談役
②小幡 純子 上智大学法科大学院教授
③葛西 敬之 東海旅客鉄道株式会社代表取締役会長
④片山 善博 慶應義塾大学法学部教授
⑤加藤 秀樹 構想日本代表
⑥古賀 伸明 日本労働組合総連合会 会長
⑦松井 孝典 千葉工業大学惑星探査研究センター所長
⑧茂木 友三郎 キッコーマン株式会社取締役名誉会長 取締役会議長
⑨吉川 廣和 DOWAホールディングス株式会社相談役
(五十音順、敬称略)
ここで野田総理が冒頭で触れられている「行政刷新会議」について見てみます。政権交代直後2009年9月に発足、あの「事業仕分け」は「行政刷新会議」のワーキンググループでした。しかしそれ以外に特段成果は見られません。それは、野田総理の冒頭発言からも「結果がでないから、やり直したい」との狙いが見え隠れします。
しかし、この「行政刷新会議」は、「行政改革に関する懇談会」が開かれた後も継続して開催されています。そして、その有識者メンバーは①~⑨まで一緒なのです。この二つの会の違いがよくわからないところです。
「行政刷新会議」の当初の目的とメンバーを参考にあげておきます。
行政刷新会議の設置について 平成21年(2009年)9月18日
閣 議 決 定1 国民的な観点から、国の予算、制度その他国の行政全般の在り方を刷新するとともに、国、地方公共団体及び民間の役割の在り方の見直しを行うため、内閣府に行政刷新会議(以下「会議」という。)を設置する。・・・(略)
行政刷新会議名簿(第一回)
議 長 :鳩山由紀夫 内閣総理大臣
副議長 :仙谷 由人 内閣府特命担当大臣(行政刷新)
議 員 :
・菅 直人 副総理(国家戦略担当大臣)
・平野 博文 内閣官房長官
・藤井 裕久 財務大臣
・原口 一博 総務大臣
・稲盛 和夫 京セラ株式会社名誉会長
・片山 善博 慶應義塾大学法学部教授
・加藤 秀樹 行政刷新会議事務局長
・草野 忠義 財団法人連合総合生活開発研究所理事長
・茂木友三郎 キッコーマン株式会社代表取締役会長CEO
野田第1次改造内閣が発足した直後、行政刷新会議の廃止を産経新聞が報道します。
行政刷新会議廃止へ 新組織設立に向け次期国会で法案提出」2012.1.20
政府は19日、平成21年の政権交代以降、民主党政権の“金看板”として事業仕分けなどを実施してきた「行政刷新会議」を廃止する方針を固めた。消費税増税に向け、公務員人件費の削減や国有資産の売却など同会議が取り扱わなかったテーマを中心に、行政改革全般に取り組むため組織の見直しが必要と判断した。増税議論の本格化を前に「行政構造改革実行本部」(仮称)を立ち上げ、政府自らが「身を切る」姿勢をアピールする。
実行本部は首相をトップに関係閣僚らで構成。行政刷新会議を「発展的に解消」(民主党関係者)し、財源捻出効果の少なかった事業仕分けも廃止する。
行政改革担当相を兼務する岡田克也副総理は会議後の記者会見で「特別会計と独法でできることは精いっぱいやった」と述べた。
行政刷新会議はこれまで3回事業仕分けを実施したが、昨年12月に民主党内に同調査会が設置されたことで議論の中心が党に移り、存在意義が問われていた。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120120/plc12012008020003-n1.htm(産経・リンク切れ)
この記事について岡田副総理は否定しましたが、事業仕分けもパフォーマンスとしてはアピールできたかもしれませんが、埋蔵金を見つけることはできず3回で終わっています。リニューアルしたかったのでしょうか?岡田氏が仰る「やるべきことはやった」について毎日新聞です。
行政刷新会議:歳出削減額示さず 独法、特会改革案了承 2012.1.20
政府は19日の行政刷新会議(議長・野田佳彦首相)で、特別会計を従来の17から11に減らし、独立行政法人は102から65以下に約4割削減する案を了承した。24日召集の通常国会に関連法案を提出する。ただ、肝心の歳出削減効果は「計るのが難しい」(岡田克也副総理兼行政改革担当相)と示さずじまい。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20120120ddm005010135000c.html(毎日・リンク切れ)
「やるべきことはやった」は、「どうだ!」なのでしょうか?「これしかできませんでした。」なのでしょうか?どちらかといえば、後者ですね。
最後に「行政改革に関する懇談会」の座長である内閣府特命担当大臣・行政刷新の岡田副総理の挨拶でこの項を終わります。
「私の好きな言葉に「強いものが生き残るのではなく、変わることができるものこそが生き残ることができる。」という話があるが、今の日本、あるいは日本政府にこのことが当てはまるのではないか。この 10 年、20 年の間に起きた大きな変化、外にあっては経済のグローバル化やアジアの時代の到来、内にあっては少子高齢化、財政の大幅な悪化などといった状況を踏まえ、いかに効率的である意味強力な政府を作り上げていくか、まさしく時代が今求めているものだと考えている。
過去には、土光臨調、橋本行革といろんなことがあった。それから少し時間も経ったので、大きな時代の変化をしっかりと受け止めつつ、政府の在り方はどうあるべきか、ぜひ大所高所からの御議論をお願いしたい。」
組織をつくるだけでは、改革はできないのです。民主党政権はそこのところがわかっていないと感じます。
この項は、このページから引用しました。→行政刷新 - 内閣府
実は、政権交代時にもう一つ「国家戦略室」という組織もできていました。初代大臣は菅直人氏が副総理と兼務しています。野田総理になって「国家戦略会議」ができました。これも鳴かず飛ばずに終わりました。次の項で紹介します。