民主党政権3年3か月の研究

悪夢でした。二度と政権をとらせてはいけません。だから記録します。

◇またも通知で大盤振る舞い「運用3号」

専業主婦の方でご主人が会社を辞めた時などに、国民年金に加入していない場合を救済するのが運用3号です。長妻厚生労働大臣のもと、2010年12月15日創設されました。

f:id:hate_88moshi:20190323000624p:plain

これは、そのような専業主婦が過去2年分の保険料をさかのぼって払えば受給資格を与えるというもので、対象者100万人とも言われ費用は1兆から3兆に上ります。これを国会の審議を経ず、一通の「課長通知」だけで行ってしまうのです。ニューズウィークの記事です。

年金の「運用3号」騒動の原因は専業主婦の年金ただ乗り

 専業主婦の年金をめぐって、国会が紛糾している。サラリーマンの妻は、年金保険料を払わなくても国民年金を受給できる国民年金の第3号被保険者だが、夫が退職や失業などで厚生年金や共済年金を脱退したときは年金受給資格を失う。この場合は国民保険料を払って第1号被保険者になる必要があるが、それを忘れて受給資格のない人が100万人以上いることが判明した。

 そこで昨年3月、こうした主婦が無年金になることを防ぐため、厚生労働省は過去2年分の保険料をさかのぼって払えば受給資格を与える運用3号の創設を決め、昨年12月に実施した。しかしこれでは「まじめに保険料を払った人が損をする」という批判が出てきた。特にこの特例措置が法改正ではなく「課長通達」という法的根拠のない文書によって行われたことが、「国会の承認なしに予算の支出を決める違法行為だ」と問題になっている。 今のところ責任の所在ははっきりしないが、運用3号を決めたのは長妻昭厚労相(当時)だったといわれ、本人も関与を否定していない。ところが昨年の内閣改造で長妻氏に代わって厚労相になった細川律夫氏が引き継ぎを受けないまま課長名で通知され、これを当時の政務官が見逃したらしい。国会で野党の追及を受けて、政府は運用3号を法改正で追認することにしたが、これは不公平を制度化するものだ。

 これを厚労省は、長妻大臣ら政務3役の了解を受けて、救済策は届け出を忘れた専業主婦が過去2年分の保険料を支払えば、それ以前の未納分は支払ったとみなされる内容を決めて、細川大臣の時、課長通知(平成22年12月15日)で処理したのだ。

長妻氏は3月8日に「不公平が発生することはあるが、『負の遺産』をいったん整理し、不公平なしにきちんとやっていくという判断を私がした」と、自らの判断で救済策を決めたことを認め、ついでに「過去の行政がきちんと処理をしていれば、問題は起こらなかった。」と釈明。・・・(略)

細川厚生労働相が恥を忍んで「私は知りませんでした」と国会答弁したのも、言外に「あれは長妻さんがやらかしたことだ」と言いたかったのでしょう。

で、課長通知だけで1兆円とも3兆円ともいわれる救済資金を投入するなんてのは、一般的な行政感覚からしますと裁量権の範囲を遥かに超えており、”法治国家”である我が国にあっては根拠法を整えてから救済策を実施に移すべき事柄です。(中国や北朝鮮リビアならOKかもしれない

https://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2011/03/3.php (News Week)

この件が明るみになると、「正直者が馬鹿を見る不公平運用」ということで紛糾します。厚労省が当時に発行した職員向けのQ&Aを見ると、かなり無理な言い訳がましいやりとりが並んでいます。目次と、なぜ国会を経て法令改正により行わないのか?、モラルハザードを起こすのではないか?の言い訳を紹介しようと思います。

「運用3号」 職員向け「Q&A」集 (第2版) 平成23年1月27厚生労働省年金局事業管理課 日本年金機構国民年金

〔目 次〕

(Q1)「運用3号」を行う理由や経緯について、現状を放置すればどうなるのか・・・など分かりやすく説明して欲しい。

(Q2)そもそも第3号被保険者期間の不整合記録はどうして発生したのか。その理由を明らかにして欲しい。

(Q3)このような不公平な措置を通知ひとつで、実施するのは納得がいかない。法律改正をしてから実施すべきではないか。

(Q4)本来、第3号被保険者でなくなったら届出を行うこととなっており、その届出を行わなかった本人の責任ではないか。

(更問)このような措置は、モラルハザードを招くのではないか。

(Q5)今回の措置は、適用日(平成23年1月1日)前に記録訂正された者

も対象とすべきではないか。そうしないと不公平ではないか。

(更問)「運用3号」によって3号期間と認められ、保険料を払わずに年金をもらう人がいるのだから、私の1号未納期間を3号期間に戻して年金を増額することを認めてくれないのであれば、年金はそのままでいいから、1号納付済期間に私が払った保険料を返してほしい。

(Q6)今回の措置は、きちんと届出を行い保険料を納付してきた者とのバランスを欠くのではないか。せいぜい、保険料免除期間や合算対象期間と見做すという取扱いに留めるのではないか。

(更問)「運用3号」の適用は受給者だけにして、被保険者については、従来通り、過去2年間について保険料を求め、2年以上経過した期間については1号未納期間とできないのか。

(Q7)年金確保支援法案が成立すると、過去10年遡って保険料を後納することができるようになる。「運用3号」も過去10年まで遡って1号未納期間に変更し、10年以上経過した期間のみ第3号被保険者とすべきでは ないか。

(Q8)「運用3号」を実施せず、不整合記録部分につき10年に限らず過去何年でも保険料を遡及して支払えるようにすればよいのではないか。

(Q9)妻を「運用3号」として救済するのであれば夫の1号未納(2号から1号になった者)も救済すべきではないか。

Q10)「運用3号」の年金給付の財源はどこから出るのか。きちんと届出をせずに「保険料のがれ」をした者に対する年金給付の財源まで負担するのは納得がいかない。

(Q11)私は運用3号の対象になりたくない。自分が届出を忘れていたのであれば仕方ないので、過去2年分の保険料は支払うし、それ以前の期間は未納期間にしてもらって構わない。そのようにしてもらうことはできない

のか。

(Q12)「運用3号」 はいつまで実施し続けるのか。

 ・・・(略)

(Q3)このような不公平な措置を通知ひとつで、実施するのは納得が いかない。法律改正をしてから実施すべきではないか。

(答) 1.今回の措置は、第3号被保険者の届出制度の適正な運営という面 においての行政努力が不十分であったこと等も勘案し、受給権者や 被保険者の皆様に不利益を生じさせないための取扱いを行おうとす るものであり、できる限り速やかな対応を行うためにも、法律改正 によるのではなく運用(通知)によって実施するものです。

2.これは、法令に基づいて第3号被保険者の届出がなされた結果で ある「現状の年金記録を変更せずに尊重する」という手法で行うも のであり、現行法に基づく第3号被保険者制度そのものの運用とし て実施するものです。したがって、現行法に定めのない新たな被保 険者区分を通知によって創設したり、「運用3号」というような新た な被保険者区分の年金記録に変更したりするものではありません。

3.仮に法律改正を行うこととなれば、改正内容の調整や実現に多く の時間を要することとなり、その間にも現在の不整合な状態への対 応が遅れていきます。特に、第3号被保険者制度を巡っては、制度 発足以来、これまでの制度改正等の際にも様々な議論がなされてお り、改正内容の調整は容易ではないと考えられます。 また、仮に法律改正を早期に実現できたとしても、これ以上多く の受給権者や被保険者の方々にご迷惑をおかけしないようにするた めには、今般の運用3号と同様の考え方をとらざるを得ないものと 考えられます。

4.このため、今般の措置は、法律改正ではなく運用(通知)によっ て速やかに対応するための現状打開策として実施するものであり、 なにとぞご理解ください。

・・・(略)

1.第3号被保険者としての生活実態がないにもかかわらず保険料を 納付しなかった期間について年金給付を認めるのは、モラルハザー ドを招く、とのご懸念は理解できます。 

2.言うまでもなく、年金制度は給付と負担のバランスで成り立って おり、保険料の納付が年金を受給する前提であることは、当然のこ とです。したがって、届出制度を熟知していながら確信犯的にそれ を怠って保険料の納付を免れた者に対して年金給付を行うようなこ とは、モラルハザードを招き、適当でないものと考えます。 しかし、救済すべきでない「不心得者」であるほど「自分は何も 知らなかった」と言い張るのが一般的であるため、確信犯かどうか を確認することは事実上困難です。逆に、聞きかじった程度の知識 があるばかりにそれを口にした「正直者」が「運用3号」の対象か ら除外されるというのは酷ではないかと考えます。

3.むしろ、今後の制度運営を適正化し、健全なモラルを維持してい くためには、不整合記録が大量に存在することが認識された今こそ、 将来に向けて、第1号被保険者への種別変更を徹底的に行っておく ことが最も重要です。これを先送りせずに一斉に行うためには、届 出を怠った人に過度な負担を強いるのではなく、保険料が時効消滅 していない期間の範囲内で被保険者としての義務を果たしていだく 方法が適当であると考え、今回の措置を講じることいたしましたの で、何とぞ、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000011je9-att/2r98520000011jid.pdf厚労省

お役所言葉の羅列ですね。通知だけで1兆から3兆もの金額を動かそうとするには、あまりにお粗末です。ここに、どうしても国会審議を避けたかった長妻氏が目に浮かぶのですが。野党の攻撃を受けずに、なんとしてもこれを通したかったという思いがあったのではないのでしょうか?そんな疑惑を個人的に抱いています。

これが決着するのは、2013年7月1日施行の「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」(平成25年法律第63号)まで時間を要しました。安倍政権になってから、きちんと法律でけじめをつけました。厚生労働省のWEBページから,その概要です。

2.第3号被保険者の記録不整合問題 (※)への対応(国民年金法の一部改正)

保険料納付実績に応じて給付するという社会保険の原則に沿って対応するため、以下の措置を講ずる。

(1)年金受給者の生活の安定にも一定の配慮を行った上で、不整合記録に基づく年金額を正しい年金額に訂正

(2)不整合期間を「カラ期間」(年金額には反映しないが受給資格期間としてカウント)扱いとして、無年金となることを防止

(3)過去10年間の不整合期間の特例追納を可能とし、年金額を回復する機会を提供(3年間の時限措置)

 (※)サラリーマン(第2号被保険者)の被扶養配偶者である第3号被保険者(専業主婦等)が、第2号被保険者の離職などにより、実態としては第1号被保険者となったにもかかわらず、必要な届出を行わなかったために、年金記録上は第3号被保険者のままとなっていて不整合が生じている問題。

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/kousei/dl/kaisei01.pdf厚労省

これも悪夢の民主党政権のおきみやげの一つでした。

 長妻氏は、生活保護の件も、この年金・運用3号の件も、重要でかつ莫大な国家予算を費やす件について国会での審議を経ずに「通達」「課長通知」だけで片付けようとして、さらに混乱を招いているのです。もしかしたら、長妻氏はこの手法が「政治主導」と勘違いをされているのかもしれません。とにかく自分自身が大臣として国会で矢面に立つのが、いやなのでしょう。野党として国会で大臣を糾弾するのはお得意ですが、大臣として自分が答弁する立場になるのは怖くてしょうがない臆病者なのだと推測されます。

国民にとって本当に必要なことなら正々堂々と国会で審議し、法制化すればいいのです。それをこそこそと「通達」で済ませてしまう卑怯なやり方、この裏には国民に対する後ろめたさがあり、国会では通りそうもないという認識がベースとなっているのではないでしょうか?

生活保護の件も専業主婦の年金の件も、誰かお友達を潤すために、特定の誰かが得するために何が何でも実現させたかったのではないかと勘ぐりたくなってしまいます。ここにも民主党政権の「コンクリートからお友達へ」の精神が見え隠れしていませんか?

次へ→       目次へ→