民主党政権3年3か月の研究

悪夢でした。二度と政権をとらせてはいけません。だから記録します。

■乗数効果??菅財務大臣の赤っ恥

民主党政権では、有能な人材が枯渇していて、大臣ポストは限られた人材でグルグル回しているだけという感じでした。いつみても同じような顔が見られたからです。いや、今でも同じような顔ですよね。野党のみなさんは・・・。

◇民主党七奉行のメリーゴーランド人事 - 民主党政権3年3か月の研究

なので、ほぼ素人が大臣務めてチョンボするなんてのは日常茶飯事だったようです。
2010年1月、鳩山政権で財務大臣は当初は経験豊富な藤井裕久氏が務めていましたが、健康上の理由(実際は違うようですが◇藤井裕久氏と15億円の領収書 - 民主党政権3年3か月の研究)で辞任した後、副総理だった菅直人氏が財務大臣を兼務することとなりました。もちろん、素人まるだし大臣だったようです。

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まず産経新聞です。

「菅」財務相、「勘」違いで「官」頼り 2010/1/26
 菅直人副総理・財務相が26日の参院予算委員会で答弁に詰まり、審議を中断して官僚の助言を仰ぐ場面があった。脱官僚依存」の先頭に立つ菅氏だが、疎いとされる経済政策の難しさを痛感させられた格好だ。
 「官依存」は自民党林芳正前経済財政担当相との質疑で起きた。菅氏は「1兆円の予算で1兆円の効果しかないやり方をやってきた」と述べ、自民党政権の投資は経済波及効果が低かったと批判した。
 すると林氏は「乗数効果のことを言っているのか」と反論。鳩山政権の目玉である子ども手当乗数効果をただしたところ、菅氏は子ども手当の支給額のうち消費に回る割合を示す「消費性向」について「おおむね0.7程度と想定している」と答えてしまった。
 林氏は首をかしげながら「消費性向と乗数効果の違いを説明してほしい」と追及すると、菅氏はついに困窮、審議は計4回ストップした。集まった大串博史財務政務官や官僚の助言を受けて「乗数効果の詳細な計算はしていないが、子ども手当の効果はある」と強弁したが、林氏は「役所の人が紙を持ってきてあわてて答えることがないように」とあきれ顔だった。

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100126/fnc1001262251020-n1.htm(産経・リンク切れ)

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菅氏は「箱もの作る公共事業ばかりの前自民党政権は1兆円支出で1兆円しか効果がない。民主党政権子ども手当にはもっと効果がある」と力説して、林氏から突っ込まれてしどろもどろになったのでしょう。私も経済専門ではないので、池田信夫氏の記事で詳しく見ていくことにしましょう。ニューズウィークです。

子ども手当に「乗数効果」はあるか 2010年02月04日 池田信夫 エコノMIX異論正論
 1月26日の参議院予算委員会で「乗数効果」をめぐって珍問答が展開された。自民党林芳正氏(元財政金融担当相)が子ども手当乗数効果はいくらか」と質問したのに対して、菅直人財務相は「子ども手当の効果は1以下だが、子育てで働けない人が働けるとか少子化が防げるとか・・・」などと意味不明な答弁をし、長妻厚生労働相も仙谷国家戦略担当相も答えられなかった。乗数効果は、高校の「現代社会」でも学ぶきわめて初歩的な経済理論である。経済閣僚が高校生以下の学力で、日本は大丈夫なのだろうか。
 乗数効果財政支出の波及効果を示すもので、限界消費性向(所得に対する消費の割合)が菅氏のいうように0.7だとすると、子ども手当乗数効果は0.7/(1-0.7)=2.3となるはずだ(計算は上にリンクを張ったブログ記事参照→下記参照)。ところが長妻氏によると、子ども手当GDP国内総生産)を「0.2%押し上げる」という。これは1兆円ということだから、子ども手当の支出額2.5兆円の乗数効果は1/2.5=0.4しかないことになる。これはどういうことだろうか?
 実は日本の実証研究でも、財政政策の乗数効果は1以下だという結果が出ている。ケインズの理論では、人々は今期の所得が増えたら自動的に消費も増やすことになっているが、実際には人々は長期的な所得を考えて消費や貯蓄の計画を立てる。特に財政支出は将来の増税になるので、それに備えて貯蓄に回る可能性もある。また政府投資の分だけ民間投資が押し出される効果などもあるため、公共投資の効果は意外に低いのだ。
 林氏は「子ども手当は貯蓄に回るので、公共投資より乗数効果が低い」と主張したが、これは必ずしも正しくない。子ども手当のような減税型の財政赤字のほうがGDPを増やす効果は大きいという結果も出ている。これは減税によって労働意欲が増すなどのインセンティブ効果があるためと考えられる。財政支出というのは元をたどればわれわれの払う税金だから、それを右から左に移すだけで経済効果があるというのは本来おかしいのだ。
 2008年秋のような非常事態では、政府が緊急避難的に民間投資の落ち込みを埋める意味もあろうが、そういう時期はもう過ぎた。金融危機への対応で財政赤字の積み上がった欧米各国の政府は「出口戦略」をさぐり始めている。その時期に、GDPの2倍近いOECD諸国で最悪の政府債務を抱える日本が、本予算と補正を合わせて100兆円を超える予算を組むのは、異常というしかない。財政赤字というのは、現在世代の消費のツケを将来世代に回す「ネズミ講」のようなもので、親が使った子ども手当増税で払うのはその子供である。それを知ったら、彼らは泣くのではないだろうか。

https://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2010/02/post-119.phpNewsweek

文章内のリンクの記事はこちらです。池田氏のブログから。2010年1月26日の参議院予算委員会の記事です。

乗数効果を知らない財務相 池田信夫 blog 2010年01月27日
財務相「1兆円の予算を使って1兆円の効果しかない公共事業はだめだ」
林芳正自民党「では子ども手当乗数効果はどれぐらいか」
長妻厚労相子ども手当は実質GDPを0.2%押し上げるが、乗数効果はわからない」
GDPの増分を財政支出で割れば乗数効果は出るだろう」
仙谷国家戦略担当相「1以上であることは間違いない。幼保一体化すれば・・・(ヤジで意味不明)
(中断。3分後に再開)
子ども手当の消費性向は0.7程度。定額給付金は0.3ぐらいだった」
「消費性向と乗数効果の違いを説明してください」
(中断。3分後に再開)
乗数効果の詳細な計算はまだしていない」
「計算すればわかるだろう。消費性向と乗数効果の関係は?」
「1兆円の事業に金を使ったとき1.3兆円の効果があれば、乗数効果は1.3・・・」
(中断。1分後に再開)
「消費性向が0.7ということは1を切っている。財政支出より低いのだから、財政支出を切って子ども手当にしたら、景気への効果はマイナスになるのではないか?」
(中断。1分後に再開)
子ども手当の効果は1以下だが、その他の効果がある。子育てで働けない人が働けるとか少子化が防げるとか・・・」
「市場が暗くなるといけないので、もうやめる」

質問している林氏も勘違いしている(消費性向と混同している)が、乗数効果というのは、政府支出を1とし、限界消費性向をc(<1)とすると、財政政策の波及効果が

     1+1×c+1×c2+・・・=1/(1-c)

となることだ。これは理科系の菅氏は当然ご存じの無限等比級数の和の公式で、消費性向が0.7であれば、乗数効果は1/0.3=3.3となる(*)。これは大学1年生の春学期で習う超初歩的なマクロ経済学の常識で、菅氏のような答案を出したら不可である。乗数も知らない落第生が、7兆円の景気対策を出して「成長戦略」を立案しているのは恐るべきことだ。やっぱり「官僚主導」でやったほうがいいんじゃないの。

(*)子ども手当の場合には初項がcなので、乗数効果は0.7/0.3=2.3になる。林氏の質問はこれを言おうとしたものだろうが、「乗数が1以下」などというので、答弁する側も混乱している。

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51353169.html池田信夫ブログ)

私は経済が専門ではないので、口をはさみません。菅氏も分からないなら、分からないで「後ほど精査する」など降参したらいいのに、その場で次から次へと知ったかぶりで答弁するものだから、官僚もアタフタしてしまったようです。こうして墓穴を掘って恥をかくことになったのです。
国会での恥だけなら良かったのですが、菅氏の場合「僕は原子力に詳しい」と東日本大震災の時に出しゃばって、あちこちに迷惑をかけてしまった悲劇がこの後待っているのです。
◇「僕はものすごく原子力に詳しいんだ」東京電力に乗り込む総理 - 民主党政権3年3か月の研究

「自分をよく見せること」が政治家の目的ではありません。「日本の国を良くすること」が目的です。
素人が大臣になっても「日本の国を良くすること」に対して前向きなら成果を上げることができると思います。しかし、その視点を持っていなかったのが民主党政権のみなさまなのです。彼らの頭の中には、おそらくこれしかありません。たぶん、今でもです。

「選挙に落ちたくない。だから自分の手柄をあげる。カッコいい自分を全国に届ける。」

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