2009年9月政権交代した民主党政権の目玉に「行政刷新会議」と「国家戦略室」の設置がありました。「行政刷新会議」の長・内閣府特命担当大臣(行政刷新)には仙谷由人氏、「国家戦略室」の長・国家戦略担当大臣には菅直人副総理が兼務で就任しています。
足元を見つめて埋蔵金を探し出す「行政刷新会議」と国の長期ビジョンを策定する「国家戦略室」その両輪が新しい政権を牽引するエネルギーとなるはずでしたが・・・。
「行政刷新会議」は、3度にわたる「事業仕分け」で存在感は示したものの埋蔵金は発見できませんでした。→◇コンクリートから人へ・事業仕分けの傷跡 - 民主党政権3年3か月の研究
会議そのものは野田政権まで続きました。→◇行政改革に関する懇談会 - 民主党政権3年3か月の研究
「国家戦略室」は、初代国家戦略担当大臣が菅直人副総理ということだけで予測ができるように、この組織がとりたてて話題となったことはありませんでした。次の国家戦略担当大臣・荒井聰氏がキャミソールで話題になったくらいです。NewsWeekに池田信夫氏の記事がありました。
池田信夫 エコノMIX異論正論「国家戦略局」がつぶされた本当の理由 2010年07月22日
・・・(略)
これに対して民主党は昨年の総選挙で、官邸主導を制度化するため国家戦略局を創設することをマニフェストの柱に掲げた。政権交代後は菅副総理が国家戦略室担当相になり、国家戦略局を設立する法案が成立したら正式に発足する運びだった。その政治主導確立法案では、国家戦略局は「予算編成の基本方針の企画及び立案並びに総合調整」を行なうことになっており、「調査審議する」だけの経済財政諮問会議より強い権限をもつ予定だった。
しかし昨年秋の臨時国会では、法案はできていたのに国会提出が見送られた。概算要求が大幅に遅れて日程が狂ったのが原因といわれるが、これが失敗だった。国家戦略室には法的権限がないため、予算編成では藤井蔵相(当時)が「予算は財務省の仕事だ」として戦略室にタッチさせなかった。通常国会でも、政治主導確立法案は時間切れで継続審議になった。
こうした状況を合わせ考えると、今回のシナリオを書いたのは首相ではなく、もっと強い「見えない力」が働いたと考えざるをえない。それはかつて諮問会議をただの有識者会議に戻したのと同じ力――財務省と霞ヶ関の既得権である。
予算編成を政治主導で行ないたいというのは、政治家の「見果てぬ夢」だが、財務官僚は金を使うのが好きな政治家にまかせたら財政が破綻すると思っているので、あらゆる手をつくして予算編成権を政治家の手から守ってきた。今回も、財務相だった菅氏を「教育」する時間はたっぷりあった。菅氏も消費税騒動で、財務官僚の応援なしに突っ走ると痛い目にあうことを実感したのだろう。・・・(略)
https://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2010/07/post-202.php(NewsWeek)
欲張って「政治主導で国家ビジョンから予算編成まで一気にやるんだ。」とポストをつくったものの法的根拠もなければリーダーシップもなく見放されてしまったってことみたいですね。
野田政権では「国家戦略会議」を招集しますが、やはり法的根拠がなく何の影響力も発揮できませんでした。→◇国家戦略会議の夢 - 民主党政権3年3か月の研究
民主党政権は、鳴り物入りで組織をつくりますが、法的根拠がなかったりして結局何の成果もあげられていないことが多いのです。組織をつくって、そこの長になって、会議を開いてそこで仕事をした気になっちゃっているようですね。