民主党政権3年3か月の研究

悪夢でした。二度と政権をとらせてはいけません。だから記録します。

■チーム前原・JAL再生タスクフォース

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政権交代で前原氏が国土交通大臣に就任して直後、JAL再生タスクフォースの設置が発表されます。これは、JAL再生に向けて自民党政権で進められていた「日本航空の経営改善のための有識者会議」を廃止して、前原氏自らが民間人の産業再生機構のOBを中心に移植して結成したもので、「チーム前原」と呼ばれます。いわば自民党のやってきたことには何でも反対、白紙撤回、ちゃぶ台返しの一つです。

公的な機関ではないので、10億円とも言われる費用は税金ではなく、全額JALが負担します。その位置づけがあいまいで法的根拠がないことは、専門家からも指摘されています。国土交通省からの発表資料です。

 JAL再生タスクフォース」の設置について 平成21年9月25国土交通大臣 前原 誠司

1.タスクフォース設置の趣旨

日本航空は、わが国最大の航空運送事業者として大きな公共的責任を担う事業を行っており、また、航空運送事業はわが国の今後の成長戦略においても重要な戦略産業であることから、その事業再生の成否は重大な公益、国益に関わる。

このため、日本航空の自主的な再建を確実に実現することを目的として、専門家集団により構成されるタスクフォースを設置し、その積極的な指導・助言のもと、日本航空の実態を厳しく客観的に把握し、従来のしがらみから自由で、抜本的な再生計画の迅速な策定と実行を主導することが望ましいと判断した。

2.タスクフォースの構成

  国土交通大臣直轄の顧問団として事業再生の専門家(当初5名)によって構成。

   高木 新二郎(リーダー)

    野村證券株式会社顧問、元産業再生機構産業再生委員長

   冨山 和彦(サブリーダー・作業統括)

    株式会社経営共創基盤代表取締役、元産業再生機構代表取締役専務

   田作 朋雄(作業統括)

    PwCアドバイザリー株式会社取締役パートナー、元産業再生機構取締役(産業再生委員)

   大西 正一郎(作業統括)

    フロンティアマネジメント株式会社代表取締役、元産業再生機構マネージングディレクター

   奥 総一郎(作業統括・連絡)

    レゾンキャピタルパートナーズ専務執行役員、株式会社ラザードフレール シニアアドバイザー

3.再生計画の策定手順とスケジュール

再生計画は、日本航空が自主再建を図るための計画であり、日本航空自らが策定し実行する。

日本航空は、再生計画策定のために、新たに、本タスクフォースが妥当と認めた外部専門家と、日本航空の社内スタッフを選定する。

日本航空は、本タスクフォースの直接の指導・助言のもとで、再生計画立案のための調査と策定作業を行う。

国土交通大臣は、上述の手順を経て提出された再生計画案について、日本政策投資銀行及び関係民間金融機関の意見聴取を行い、本タスクフォースによる妥当性評価報告を受けた上で、再生計画の妥当性の確認を行い、その実行について日本航空を指導・監督する。

具体的なスケジュール

     9月25日   JAL再生タスクフォース発足

     10月末頃   再生計画案骨子完成・国土交通大臣確認

     11月末頃   再生計画確定

http://www.mlit.go.jp/report/press/cab04_hh_090925.html国交省

 就任直後、大張り切りの前原氏です。前政権の活動をバッサリ切って新体制で臨むという意気込みがありありと見えます。

この再生タスクフォースの評価については、下記、週刊ダイヤモンドの町田徹氏の記事が的確ではないかと思います。この記事で最後に筆者が指摘する「「チーム前原」主導で、解体・転売への道をひた走っている」ことは現実では回避されていますが、このタスクフォースのあいまいな位置づけを鋭くとらえています。一部を抜粋して紹介します。

銀行・大株主がそっぽ向く「チーム前原・JAL再建案」の本当の狙い 2009.10.16 町田 徹:ジャーナリスト 

 前原誠司国土交通大臣日本航空JAL)に送り込んだ「JAL再生タスクフォース」(チーム前原)は13日、「途中経過は知らせない」としていた方針を突如変更し、JAL経営陣らに再建の素案を提示した。

 報道・取材を総合すると、その最大の特色は、前原大臣がこれまで示してきた「自主再建」の方針を撤回し、取引先銀行に2500億円を超す債権カットを求めるなど、外部に重い負担を要求する内容に変質したことがあげられる。

 その半面、JAL自身の自助努力としては、西松遥社長の辞任と整理する人員数の増加(当初の6800人から9000人に拡大)を迫ったのが目立つぐらいなのだ。

・・・(略)

民間企業に国が再建チームを送り込む根拠への疑問も

 チーム前原は、前原大臣が9月25日に、設置、JAL内部に送り込むと発表した。同大臣は、西松JAL社長が前日に説明した再建策を「実現可能性、或いは時間軸について、不十分だ」と決めつけた。そのうえで、「1日でも早く本来あるべき自主再建案をまとめるためにタスクフォースを立ち上げたいということを申し上げ、(訪米中の)鳩山総理から了解を頂いた」と述べた。首相の承認も得た組織だと権威づけをしたのだった。

・・・(略)

 ただ、前原大臣の説明にもかかわらず、当初から、こうした手法を問題視する指摘が存在した。というのは、民間企業であるJALに、こうしたチームを送り込んで、経営陣に代わって再建策を作ることを良しとする根拠が、一般法はもちろんのこと、国土交通大臣の所管の航空法という業法にもないためだ。

 その後、このタスクフォースの行ないがひんしゅくを買う“事件”があった。10月8日付けで時事通信が配信した記事に詳しいが、タスクフォース傘下の人員が「当初計画の3倍以上、延べ100人規模に急増」し、その「経費が10数億円以上で、ほぼ全額を日航が負担する方向で調整中」のため、「同社の財務への影響も懸念されている」というものだった。換言すれば、企業として生死の境をさ迷うJALの資産を貪るようでは、かつて、経営危機に陥った企業を買い叩き、転売によって暴利を貪ることが忌み嫌われた“ハゲタカ”となんら変わらないのではないか、ということだったのだ。

・・・(略)

https://diamond.jp/articles/-/3397?page=4週刊ダイヤモンド

 町田氏の述べている、このタスクフォースの問題点をまとめます。

①「自主再建」の方針を撤回し、外部に重い負担を要求する内容に変質したこと

②民間企業であるJALにチームを送り込み、経営陣に代わり再建策を作ることに法的根拠がない。

③タスクフォース傘下の人員が「当初計画の3倍以上、延べ100人規模に急増」し、その「経費が10数億円以上で、ほぼ全額を日航が負担する方向で調整中」

 日経ビジネスオンラインにも下記のような指摘がありました。

JAL再生タスクフォース」は何様なのか? 
記憶に残るも、記録は乏しい産業再生機構OBの“成果”  高橋 篤史

・・・(略)

 多くのステークホルダーJALの行方を見守る中、なぜ大臣が私的に委嘱した民間人がそのような強力な「権限」を持てるのか、今ひとつ理解に苦しむところではある。仮にそれが取るべき選択肢だとするなら、タスクフォースは代わりにどのような「責任」を負うというのか。少なくとも、将来(それは数十年後でも構わない)の検証の材料となる記録を残すことで、最低限の「説明責任」を果たしてもらいたいものだ。

 https://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090928/205716/?P=3日経ビジネス・リンク切れ)

 日刊ゲンダイでジャーナリストの有森隆氏がこう指摘しています。

 JAL倒産<上>民主党政権が「実績」づくりに利用したのか 2018/08/01

 はっきり言おう。民間企業であるJALに大臣直轄の顧問団(国土交通省の「日本航空の再生への取組み状況」)を送り込み、経営陣に代わって再建策を練ることの法的根拠は乏しかった。国交相が所管する航空法を援用するのにも無理があった。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/234447/2日刊ゲンダイ

民主党お得意の法的根拠なしに、政治主導だイケイケどんどんで、前原氏のお友達で私的な組織をつくり、JALに対し必要以上のちょっかいを出している感じでしょうか?

ここにも、「コンクリートからお友達へ」の匂いがしてきませんか?

先にも述べましたが、この後2010年4月、前原大臣は、国労組合員らのJR不採用問題で原告国労側と和解し、約200億円の税金を支出しています。国鉄の民営化は1987年、日本航空の民営化も1987年です。すでに民営化して20年以上が経過している民間企業に対し、政府の関与の仕方がおかしいのではないか?と思います。間違えました。JALの場合政府ではなく、国土交通大臣・前原氏の関与の仕方がおかしいのですね。私的な機関ですから「チーム前原」は・・・。

このタスクフォースは、発表された11月末頃・再生計画確定を待たず、設置から約1か月後の10月末に資産査定の終了と再生計画の提出をもって解散することになります。そしてJAL再建は、株式会社企業再生支援機構に引き継がれることになります。

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