「(日教組は)政権交代にも手を貸す。教育の政治的中立などといわれても、そんなものはありえない。」
鳩山政権において代表代行兼参院議員会長に就任した輿石東氏(参・山梨県選挙区)が、2009年の日教組「新春の集い」あいさつで述べた言葉です。とんでもない言葉です。鳩山政権では、小沢氏を支える役として幹事長代行も兼任、鳩山おろしのあたりからテレビで頻繁にその顔を見るようになります。
藤井裕久氏の好々爺的な一面はなく、頬がこけ眼光鋭い悪人的な顔に、当時私は、ミイラ輿石と呼んでいました。およそ教育を語る人相ではないと思いますが、山梨県日教組におけるその権力には、すさまじいものがあります。この山梨県における彼の権力の実態を産経新聞の記者・阿比留瑠比氏が書籍「決定版 民主党と日教組」(産経新聞社 2010/5/28)で明らかにしています。一部を紹介させてください。
「山教組と県政連は長年にわたって教員や教員OBから「校長三万円、教頭二万円、一般教員一万円、OB教員五千円」などの半強制カンパを繰り返しそれを政治資金収支報告書に記載していませんでした。カンパには領収書は発行されず、総額も使途も明らかにされないまま、輿石らへのヤミ献金にあてられていたわけです。」
「輿石東・民主党参院議員会長が「私自身の政治団体」と明言した県政連(山梨県民主教育政治連盟)。そのトップが、自身への政治献金をめぐり、政治資金規正法違反で罰金刑を受けたにもかかわらず、知らぬ存ぜぬを通したままだ。そして、「私の政治信条は、ぶれない、逃げない、ウソつかない」だと言い放つ。
「読んだらこの用紙を破棄してください」という資金カンパを求める通知はもとより、退職職員にまでカンパを求め、堂々と学校内で選挙活動が行われている教育現場の実態を看過できるかどうか。有権者が判断するしかない。」
阿比留氏は怒りをこめて訴えます。
この件について検索をしていると、文部省の通達に行きあたりました。
教職員等の選挙運動の禁止等について 14文科初第一〇四七号
平成一五年一月二七日
教職員等の選挙運動の禁止等について
公務員は、全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではなく、その政治的中立性を確保するとともに、行政の公正な運営の確保を図る必要があることは言うまでもありません。
特に、教育公務員(校長、教頭、教諭、助教諭、養護教諭、養護助教諭、常勤及び再任用短時間勤務講師、実習助手、寄宿舎指導員)については、教育の政治的中立性の原則に基づき、学校において特定の政党の指示又は反対のために政治的活動をすることは禁止され、さらに選挙運動等の政治的行為の制限等についても公職選挙法及び教育公務員特例法に特別の定めがなされているところです。
このたびの選挙にあたっても、左記の事項に留意の上、貴教育委員会が服務監督権を有する教育公務員に対して禁止行為の周知徹底を図り、教育公務員が個人としての立場で行うか職員団体等の活動として行うかを問わず、これらの規定に違反する行為や教育の政治的中立性を疑わしめる行為をすることにより、国民の教育に対する信頼を損なうことのないよう、服務の確保について格段の配慮をお願いします。
また、教育公務員以外の教育委員会事務局職員等については、地方公務員法により政治的行為が制限されているところであり、いやしくも、公務員の政治的中立性を疑わしめる行為をすることにより、教育行政に対する国民の信頼を損なうことのないよう、その服務の確保についても格段の配慮をお願いします。
その際、非違を犯した者があったときは、厳正な措置をとられるようお願いします。
さらに、教育委員会の委員についても、積極的に政治運動をすること及びその地位を利用して選挙運動をすることは禁止されているので、念のため申し添えます。
特に、近年、公務員による公職選挙法違反が大きな社会問題となったこと等をふまえ、本年四月に行われる統一地方選挙に際しては、一段と以上の趣旨の徹底を図るようお願します。
なお、都道府県教育委員会におかれては、以上の趣旨を域内の市町村教育委員会に周知くださいますようお願いします。
・・・(略)
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t20030127001/t20030127001.html(文科省)
「公務員は、全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではなく、その政治的中立性を確保するとともに、行政の公正な運営の確保を図る必要があることは言うまでもありません。」
輿石氏は、文部省に真っ向から対立するどころか、舐めきっているようです。フフンと鼻であしらい、全く聞く耳を持っていません。
さて日教組は、政権交代に際して、民主党政権に対して最も望むことが一つありました。第1次安倍政権で成立した教員免許更新制を廃止することです。民主党マニフェスト2009のマニフェスト政策各論に、こんな記述があります。
教員の資質向上のため、教員免許制度を抜本的に見直す。教員の養成課程は6年制(修士)とし、養成と研修の充実を図る。
2007年6月、第1次安倍政権下で改正教育職員免許法が成立します。教員は10年ごとに計30時間以上の講習を受け、認定試験で不合格となれば、2年以内に再試験で合格しない限り教員免許が失効するというものです。不適格な教員を排除する目的で導入されました。
これが日教組にとっては目の上のたんこぶ。一度教員になってしまえば、勉強などしなくても身分は保証されるし、日教組が強力なので多少の不祥事ではクビにならない。ぬるま湯的な職場に、安倍政権がくさびを打ち込んだ形になりました。
2009年4月から施行されて半年後に、政権交代がおきるのです。日教組としては狂喜乱舞だったことでしょう。「目の上のたん瘤を一掃できる。」と・・・。輿石氏も早速動き出します。産経新聞です。
日教組の主張通りへの一歩に 免許更新制廃止 2009.9.13
民主党の輿石東(こしいし・あずま)参院議員会長兼代表代行が廃止に向けた法改正案を提出する考えを示した「教員免許更新制」。教育問題に詳しい八木秀次・高崎経済大教授は、「廃止は日教組の主張そのままだ。今後、安倍内閣が手がけた教育再生をゼロベースに戻し、日教組の主張通りの政策に転換する第一歩と考えていいのではないか」と懸念を示す。
・・・(略)
http://sankei.jp.msn.com/life/education/090913/edc0909130047000-n1.htm(産経・リンク切れ)
ところが、ところが、この免許更新制度の廃止が遅々として進まないのです。マニフェストでは、代案として教員の養成課程は6年制(修士)とするありますが、どうせ思いつきで中身とか考えていなかったから、出すに出せなかったのではないでしょうか?
その内に「政治とカネ」の問題が浮上、下記で紹介する北教組の不正献金問題が発覚、輿石氏は自身の参議院選挙でそれどころじゃない。そして民主党は参院選で惨敗、ねじれ国会になってしまい廃止できなくなってしまいました。チャンチャンと行きたいところですが、その裏の現場では、大混乱が起こっていました。
免許更新制度が廃止になると目論んでいた教員が数多く存在していたのです。「ざまぁみろ!」と個人的には言いたいですね。産経新聞の記事です。
あわや失効 教員免許更新でキャンセル待ち続出 2011/06/25
教員免許の更新に必要な講習に教員の応募が殺到し、全国の講習会場でキャンセル待ち状態が続出していることが25日、分かった。民主党が教員免許更新制度の廃止を打ち出したものの、その後の参院選で惨敗し制度廃止の法案が提出できない状況のため、廃止を見越して講習を受けていなかった教員が“駆け込み応募”したためとみられる。今年度中に講習を受けないと免許を失効する可能性もあり、文部科学省は全国の実態調査に乗り出す検討に入った。
教委免許更新制度は、自公政権下で平成21年度に始まり、教員免許に10年の有効期間が設けられた。文科省認定の大学などで必要な講習を受け、認定試験に合格しなければ教員免許は失効する。今年度の受講対象者は22、23年度中と23、24年度中に講習を修了しなければならない教員だ。
筑波大では6月と8月に114講座を実施。延べ約6500人分を受け入れるが、ほぼすべての講座で定員が埋まり、キャンセル待ちの状態。定員125人に対し約60人がキャンセル待ちの講座もあり、10月に予定する講座もすでに定員は埋まった。
東京学芸大も夏季期間に142講座を用意したが、「7割ほどの講座がキャンセル待ちの状態」(同大)。両大学とも昨年度より受け入れ人数を大幅増員したが、申し込みの多さに対応できなくなっている。
・・・(略)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110625/edc11062519180002-n1.htm(産経・リンク切れ)
しかし、この輿石氏の山梨教組問題と次に紹介する北海道教組の事例は、全国に日教組のすさまじい実態を知らしめることになりました。マスコミはあまり積極的に報じていませんが・・・。
元々、公務員に組合があること、組合が政治活動を行うことに疑問を感じていた私としては、良い風が吹き出したなと率直に思いました。
日教組の2009年の組織率は27.1%、2017年は22.9%(文部省)でどんどん落ちています。それでも、とんでも教師は、現場にまだまだ蔓延っているようです。今後も日教組の動きには、注目していきたいです。
さて、2010年7月の参院選では、自民党は元教員の宮川典子氏を山梨県選挙区で擁立し、党を挙げての猛烈な選挙運動を展開します。一方の輿石氏は「政治とカネ」で鳩山政権が失速したこと、高齢であることがマイナスイメージとなり苦戦しますが、3,745票差で宮川氏に競り勝ちます。この時の輿石氏の勝ち誇った顔に、相当悔しい思いをしました。
その後、無投票で党参議院議員会長に再選しますが、脱小沢を掲げる菅政権では、小沢氏に近い輿石氏の出番は少なくなります。しかし、党内融和を目指す野田政権では党の幹事長に抜擢されます。当時。この顔が頻繁にテレビ出てくるようになり、げんなりした記憶があります。消費税増税をめぐり、野田政権と小沢グループの対立が激化すると、その調整役として奮闘しますが、努力むなしく小沢グループは離党していきます。野田第二次改造内閣でも幹事長を留任しますが、もうその存在感はなくなっていました。
輿石氏は、2016年の参議院選挙の際に引退しています。山梨県選挙区では、輿石氏の票田を引き継いだ民進党の宮沢由佳氏が当選。宮沢氏は「NPO法人子育て支援センターちびっこはうす」を設立するなどの活動をしていました。思想的には輿石イズムを引き継ぐサヨク側で、現在は立憲民主党に合流しています。
2016年11月3日、輿石氏は秋の叙勲で「参院副議長などとして国会の円滑な運営に寄与した」として旭日大綬章を受章しています。
日本の教育政策を舐めて、教育現場を私物化した人間に叙勲はどうかと思いますが・・・。天皇家を否定している日教組のドンとしては、どんな気持ちだったのでしょうか?