民主党政権3年3か月の研究

悪夢でした。二度と政権をとらせてはいけません。だから記録します。

◇郵政民営化改正法の成立は野田政権

2010年5月30日に衆議院強行採決された郵政改革法案は、6月2日に鳩山総理が辞任、菅内閣が発足、支持率が急激に回復したことを受け、支持率が落ちないうちに参議院選挙をしたいという党内の声に押され、先送りされてしまいました。
これに激怒した国民新党代表のの亀井静香金融・郵政改革担当大臣が辞任してしまい、強力な推進エンジンを失った法案が成立するには、野田政権まで待たなければなりませんでした。この間、法案は出されても実質的な審議が行われなかったようです。
流れで把握するために、ここで2年ワープします。2011年9月野田内閣が誕生します。金融・郵政改革担当大臣は自見庄三郎氏です。2012年3月に民主党自民党公明党の3党が合意して、ようやく改正郵政民営化法案が動き出します。
しかし、この法案成立は地味です。あまりニュースや画像が検索にひっかかりません。

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参議院の総務委員会が発行したドキュメントがありました。郵政民営化の国会での動きが詳細にわかります。ここでは、民主党政権以降を抜粋します。野田政権でこの法案が成立した背景には東日本大震災の復興財源確保も絡んでいるようです。

日本郵政グループ3社の株式上場と今後の課題 総務委員会調査室 大森 麻衣

平成21年8月の衆議院議員総選挙により多数を占めた民主党社会民主党及び国民新党の3党は、郵政事業の抜本的見直しを含む政策合意を行った上で連立政権を樹立した。そして、平成21年12月、郵政民営化の抜本的見直しが行われるまでの暫定的な措置として、日本郵政株式会社、郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式の処分の停止等に関する法律案」(以下「郵政株式処分停止法」という。)を成立させた。次いで、政府は平成22年4月、第174回国会に日本郵政株式会社、郵便事業株式会社及び郵便局株式会社の合併等を内容とする郵政改革関連3法案6を提出したが、同国会において廃案となった。その後、同年7月の第22回参議院議員通常選挙の結果、参議院における与党の議席過半数に届かず、いわゆる「ねじれ」が生じることとなり、同年10月に召集された第176回国会に政府は第174回国会提出時のものとほぼ同内容の郵政改革関連3法案を再提出したものの、実質的な審査が行われないまま推移した。この間、郵政株式処分の停止により郵政民営化の動きは一時中断されていた一方で、郵政民営化の見直しが実現に至らない状態となっていた。このような中、平成23年3月の東日本大震災の発生を受け、同年11月に東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(以下「復興財源確保法」という。)が成立した。同法は復興特別税の創設等を規定するほか、附則において、復興財源確保のため、日本郵政株式会社の株式について処分の在り方を検討し、その結果に基づいて、できる限り早期に処分することを明記した。

こうした状況の下、民主党自由民主党及び公明党の3党により郵政改革について協議が行われ、日本郵政グループの再編や金融2社(株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険をいう。以下同じ。)の株式の処分の在り方について合意がなされた。平成24年の第180回国会において、政府は郵政改革関連3法案を撤回する一方、3党は「郵政民営化法等の一部を改正する等の法律案」を共同で提出し、同年4月に成立した。

本法律は、

①分社化に伴い郵便局における一元的な対応が損なわれていること等に対応するため、郵便局株式会社が郵便事業株式会社を吸収合併し、商号を日本郵便株式会社に変更すること

②郵便局における金融のユニバーサルサービス日本郵政株式会社及び日本郵便株式会社に義務付けること

日本郵政株式会社が保有する金融2社の株式は全て処分することを目指すものの、処分期限は廃止すること

④金融2社の新規業務については両社の株式の2分の1以上を処分後は認可制から届出制に緩和すること

等を内容としている。本法律は、平成24年10月1日に施行された。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2015pdf/20151201133.pdf参議院

こうしてようやく郵政民営化改正法案が成立します。
これを待ち焦がれていたJP労組・組合の側の興味深いドキュメントを見つけました。「JP労組が政治活動に 関わる必要性とは」。この法案に関する一部を引用します。

JP労組が政治活動に 関わる必要性とは - 日本郵政グループ労働組合
「改正郵政民営化法」の成立

政治は、まさに「生き物」であり、「現実的」だと痛感します。郵政は過去ずっと政争の具というか、政治に翻弄され続けてきました。
「改正郵政民営化法」では、JP労組本部は執行委員長はじめ各役員、そして地方役員も、議員会館に連日要請活動を行い、昼夜を分かたぬ取り組みを展開しました。
JP労組の進める政策の「真の理解者」である民主党は郵政改正を積極的に取り組んできており、国会では、JP労組組織内議員である難波奨二参議院議員を中心に、赤松広隆衆議院議員奥野総一郎衆議院議員中井洽衆議院議員(当時)、山花郁夫衆議院議員(当時などの組織内議員はもとより、JP労組政策議員フォーラムの議員を中心に、与党民主党から当時野党であった自民党公明党に働き掛けを展開し機運は醸成されつつありましたが、自民党内における過去の経緯や改正反対派の抵抗は根強く、最終的な合意に至るのは困難を要しました。
当時、衆参はネジれており、改正郵政民営化法を与党単独で可決成立させることはできず、また政権交代により改正が繰り返されることをなくすためには、やはり当時野党であった自民党公明党と合意を結ぶことが絶対不可欠でした。
そのような状況の中、可決成立に導いたのは「民意」すなわち「国民の声」の後押しでした。2011年3月11日に発生した「東日本大震災」です。自らも被災者である郵便局員は、どこにいるかわからない被災者に、避難所を何軒も廻り、郵便物を配達した使命感に対し、感謝と賞賛の声が多く寄せられました。と同時に、郵便配達員にお金を預けたり、持ってきてもらったり、かつて出来たことが今は法律上出来ない。家を失い、車も流された被災者の置かれた状況と不便さから、不満や苦情も数多く寄せられました。
2005年に成立した「郵政民営化法」による分社化によって、逆にサービスは低下した、この弊害のある法律を改正してほしいとの被災地・被災者からの声は、地方議員や国会議員を通じ各政党本部へ多数寄せられました。
その「声」は、自民党公明党の背中を押し、遂に、民主党自民党公明党の3党が合意し、2012年4月27日に「改正郵政民営化法」が可決成立しました。国民の声は届いたのです。

https://www.jprouso.or.jp/activity/lab/publish/pdf/32_3.pdfJP労組

 JP労組の進める政策の「真の理解者」である民主党の表現に、いかに組合にとって民主党政権の存在が大きかったかがわかります。そして民主党政権の重鎮の先生方への熱心なロビー活動が繰り広げられたことが伺えます。また東日本大震災が法案成立のきっかけになっていることが、法案成立の要因となっていることは、上記参議院のドキュメントと共通しています。

2019年の参議院選挙において、立憲民主党の比例で当選した上位5位は自治労日教組などの組合関連(元総評系)、国民民主党の比例で当選した3名全員がUAゼンセンなどの組合関連(元同盟系)。今でも組合が野党の大きなチカラとなっているのです。その活動の一端を覗き見ることができるドキュメントです。

さて、ここまで郵政民営化に対する民主党政権の動きを見てきました。

小泉郵政解散に端を発した郵政民営化は、民主党政権日和見体質と組合とのしがらみの間で翻弄されてきたことがわかりました。タラれば言うのはご法度ですが、あのまま西川社長のもとで小泉郵政民営化が進んでいたら、どんな姿になっていたのでしょう。
ちょっと気になるところです。

最後に、民主党政権ちゃぶ台返しをしたおかげで起こったゆうパックの悲劇を次の記事で紹介して、郵政民営化の項を終えたいと思います。

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