民主党政権の中で確実に実行された数少ないマニフェストの一つがこれです。
「生活保護の母子加算を復活し、父子家庭にも児童扶養手当を支給します。」
生活保護の母子加算は、自公政権において2008年末に削減されたものが復活することになりました。
朝日新聞と47News(よんななニュース)・共同通信配信の記事を参照ください。
母子加算、12月復活決定 就学・学習支援費も存続 2009年10月22日
生活保護のひとり親世帯に対する「母子加算」が、12月から復活することが決まった。長妻昭厚生労働相と藤井裕久財務相が21日夜、電話で協議し、今年度支給される4カ月分の財源として予備費から60億円を充てることで合意。22日に財務省内で会談し、確認した。23日の閣議で正式決定する。・・・(略)
来年度分は180億円が必要となるが、厚労省は来年度予算の概算要求の中で金額を示さない「事項要求」にしている。
http://www.asahi.com/seikenkotai2009/TKY200910210554.html(朝日)
父子家庭にも児童扶養手当支給 来年から、概算要求で百億円 2009/10/14
厚生労働省は14日、所得の低い母子家庭を対象に支給されている児童扶養手当について、来年から同様に低所得の父子家庭にも支給する方針を固めた。2010年度の概算要求に約100億円を盛り込む。新たに支給対象となる父子家庭は約10万世帯となる見込み。
・・・(略)
https://www.47news.jp/CN/200910/CN2009101401000337.html(47News共同・リンク切れ)
これを待ち望んでいた方も多くいらっしゃいますが、国民の多くの一般家庭の家計にも、世間の景気にもほとんど何も影響を与えません政策であることも事実です。問題はここからです。
参議院自民党の「☆民主党政権の検証」では次のように記されています。
生活保護問題
H21.12に「速やかな保護決定」を求める通知を発出。以後、受給者の際限ない増加に歯止めがかからなくなってしまった。
(「☆民主党政権の検証」25ページ)
その通知とはどのようなものか見てみましょう。
社援保発 1225 第 1 号 平成 21 年 12 月 25 日
都道府県 各 指定都市 民生主管部(局)長 殿
失業等により生活に困窮する方々への支援の留意事項について
先般、政府の「緊急雇用対策」(平成 21 年 10 月 23 日緊急雇用対策本部決定)に基づき、失業等により生活に困窮する方々への支援として、ハローワークにおけるワンストップ・サービス・デイが実施されたところです。職員の派遣等、御協力いただいた関係地方公共団体には改めて御礼申し上げます。
当該事業の実施に当たっては、利用者の方々から高い評価をいただいたところですが、一方、失業等により生活に困窮する方々への支援について課題も生じております。
こうしたことを踏まえ、各自治体におかれては、引き続き「職や住まいを失った方々への支援の徹底について」(平成 21 年 3 月 18 日社援保発第 0318001 号保護課長通知)及び「緊急雇用対策における貧困・困窮者支援のための生活保護制度の運用改善について」(平成 21年 10 月 30 日社援保発 1030 第 4 号保護課長通知)の趣旨を再度ご理解いただくとともに、失業等により生活に困窮する方々への支援に当たっては、ハローワーク等の関係行政機関や、ホームレス支援を行う NPO 法人等の民間団体と連携の上、下記の事項について留意し、効果的で実効ある生活保護制度の運用に努めていただきますようお願いいたします。
記
1 速やかな保護決定
失業等により生活に困窮する方が、所持金がなく、日々の食費や求職のための交通費等も欠く場合には、申請後も日々の食費等に事欠く状態が放置されることのないようにする必要がある。そのため、臨時特例つなぎ資金貸付制度等の活用について積極的に支援し、保護の決定に当たっては、申請者の窮状にかんがみて、可能な限り速やかに行うよう努めること。
2 住まいを失った申請者等に対する居宅の確保支援
失業等により住居を失ったか、又は失うおそれのある者に対しては、まず安心して暮らせる住居の確保を優先するという基本的な考え方に立ち、「居宅生活可能と認められる者」については、可能な限り速やかに敷金等を支給し、安定的な住居の確保がなされるよう、支援すること。
なお、居宅生活ができるか否かの判断に当たっては、「生活保護問答集」(平成 21 年 3月 31 日保護課長事務連絡)問 7-107 において判断の視点を示しているところであるが、これは判断の視点であって、そのうちの一つの要件が満たされないことのみをもって居宅生活ができないと判断することのないよう、留意されたい。
3 適切な世帯の認定
失業等により住居を失い、一時的に知人宅に身を寄せている方から保護の申請がなされた場合には、一時的に同居していることをもって、知人と申請者を同一世帯として機械的に認定することは適当ではないので、申請者の生活状況等を聴取した上、適切な世帯認定を行うこと。
4 他法他施策活用の考え方
就職安定資金及び総合支援資金等の公的貸付制度及び住宅手当は、生活保護法第 4 条第1 項のいう「その他あらゆるもの」には含まれず、本人の意に反して利用を強要することはできないものであること。
保護の相談時には、相談者に誤解が生じないよう、適切な助言に努めること。
5 実施機関が異なる申請者の対応
面接相談時に、相談を受けた福祉事務所と保護の実施責任を負う福祉事務所が異なることが判明した場合においても、相談者が保護の申請意思を示した場合には、相談を受けた福祉事務所から相談者の実施責任を負う福祉事務所に相談記録等を速やかに回付すること。
6 関係機関との連携強化等について
保護の実施機関においては、住宅手当、総合支援資金及び訓練・生活支援給付金等の各種関係施策について積極的な情報収集を行うとともに、特に失業等により生活に困窮する方々に対しては、生活保護の相談のみならず、これらの関係施策の活用なども含め生活全般の相談に対応するよう配慮すること。
また、相談に対応した職員は、必要に応じてハローワークや社会福祉協議会等の関係機関の担当者と連絡を取り、個々の調整を行う等、関係機関との連携強化に努め、相談者に配慮した対応を行うこと。
さらに、上記 2 の安定的な住居の確保に当たっては、ホームレス支援を行っている NPO法人等の民間団体や不動産業者等との連携に努めること。
http://kamamat.org/nen-pyou/2000/2000-img/2009-1225-tuchi.pdf(釜ヶ崎支援センター)
「可能な限り速やか」に生活保護認定しなさい。とのお上からの通知です。この通知以降生活保護受給者に歯止めが効かなくなったと「民主党の総括」は述べているわけです。
釜ヶ崎支援センターがこの通知をネットで公開していることからも、生活保護を受ける側に立てば、とても重要なものであることがわかります。
2015年5月の厚生労働省の資料から、「過去10年間の生活保護受給者数の推移」のグラフをピックアップします。
[PDF]生活保護制度の現状について - 厚生労働省 2ページ
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000164401.pdf(厚生労働省)
このグラフでは、世界金融危機が原因と記されていますが、2009年12月のこの通知により急激な増加傾向にあることは、一目瞭然です
外国人の生活保護受有者も同様に増えています。一番多いのは「韓国・朝鮮」です。
[PDF]生活保護に関する実態調査 結果報告書 - 総務省 42ページ
http://www.soumu.go.jp/main_content/000305409.pdf
不正受給もこれを機に増加しています。上記資料の48ページの表からからグラフを作成しています。
これまで生活保護を申請して認可を得るには、かなりハードルが高かったのですが、「可能な限り速やか」とお上のお墨付きをもらって、一気にハードルが下がったわけです。生活保護を口利きしている地方議員などが喜んだことは容易に察することができます。窓口のお役人にとっては、面倒くさい調査などを形式上にして、バンバン判子を押したことと思います。この結果、生活保護の受給者は2012年7月に、過去最多の212万4669人にのぼることとなります。
ところが、これでネットは炎上します。ご覧のような画像が出回り、生活保護への疑念が大きく広がっていきました。吉本興業芸人の生活保護問題が話題になったり、生活保護を受けないで餓死された方が発見されたのもその勢いに拍車をかけました。
本当に必要な人に必要なお金が行けばいいのですが、不正受給の温床になりやすい制度そのものに問題が残っていそうです。
野田政権になると、財源がなくなって逆に生活保護費を削減しようとします。場当たり的で首尾一貫しない政権運営で振り回されるのは、一番困っている人たちです。