「最低でも県外」。鳩山総理の妄言で迷走した沖縄普天間基地問題は、2010年5月28日両国の外務閣僚と防衛閣僚が協議する日米安全保障協議委員会(Japan-United States Security Consultative Committee, SCC)いわゆる日米2プラス2の共同声明で「辺野古移転」合意を発表しました。その後民主党政権の菅政権、野田政権ではどのような扱いだったのでしょうか?
調べてみると、日米2プラス2協議は毎年初夏の時期に共同声明を発表しています。その共同声明を追っていくことで、その動きをつかんでいきたいと思います。
まずは鳩山政権。共同声明の普天間基地の部分だけを抜粋します。
<仮訳> 共同発表 日米安全保障協議委員会 2010年5月28日
岡田外務大臣
北沢防衛大臣
クリントン国務長官
ゲイツ国防長官閣僚は,沖縄を含む地元への影響を軽減するとの決意を再確認し,これによって日本における米軍の持続的なプレゼンスを確保していく。この文脈において,SCCの構成員たる閣僚は,同盟の変革と再編のプロセスの一環として,普天間飛行場を移設し,同飛行場を日本に返還するとの共通の決意を表明した。
閣僚は,このSCC発表によって補完された,2006年5月1日のSCC文書「再編の実施のための日米ロードマップ」に記された再編案を着実に実施する決意を確認した。・・・(略)
このことを念頭に,両政府は,この普天間飛行場の移設計画が,安全性,運用上の所要,騒音による影響,環境面の考慮,地元への影響等の要素を適切に考慮しているものとなるよう,これを検証し,確認する意図を有する。
両政府は,オーバーランを含み,護岸を除いて1800mの長さの滑走路を持つ代替の施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に設置する意図を確認した。
普天間飛行場のできる限り速やかな返還を実現するために,閣僚は,代替の施設の位置,配置及び工法に関する専門家による検討を速やかに(いかなる場合でも2010年8月末日までに)完了させ,検証及び確認を次回のSCCまでに完了させることを決定した。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/joint_1005.html(外務省)
鳩山政権では、「最低でも県外」で迷走した結果、最終的に普天間基地の返還、移転先は辺野古と両国で合意、明記されました。→◇辺野古への回帰③・共同発表 日米安全保障協議委員会
菅政権、2011年6月の共同声明です。普天間基地の部分のみ抜粋です。
〈仮訳〉日米安全保障協議委員会文書 在日米軍の再編の進展 2011年6月21日
クリントン国務長官
ゲイツ国防長官
松本外務大臣
北澤防衛大臣1.沖縄における再編
(a)普天間飛行場の代替の施設
・SCCの構成員たる閣僚は,ロードマップの鍵となる要素である普天間飛行場の代替の施設の重要性を再確認した。
・閣僚は,2010年5月28日のSCC共同発表において確認されたように代替の施設はキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に設置されることを想起しつつ,普天間飛行場の代替の施設に係る専門家検討会合(以下「専門家会合」という。)の分析に基づき,位置,配置及び工法の検証及び確認を完了した。
・閣僚は,代替の施設を,海面の埋立てを主要な工法として,専門家会合によって記されたようなV字型に配置される2本の滑走路を有するものとすることを決定した。それぞれの滑走路部分は,オーバーランを含み,護岸を除いて,均一の荷重支持能力を備えて,1800mの長さを有する。閣僚は,環境影響評価手続及び建設が著しい遅延がなく完了できる限り,この計画の微修正を考慮し得ることを決定した。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/pdfs/joint1106_02.pdf(外務省)
菅政権では、V字滑走路による建設を合意しています。これには裏があるのです。菅政権は2006年に一度は合意しているV字滑走路の代替案としてI字滑走路を米側に提案していたのでした。図は朝日新聞からです。
これは、自民党政権時代のものには何でも反対、ちゃぶ台返しの一環だったようです。と同時に着工を遅らせるための時間稼ぎだったと思います。
とはいえ、ポッと出の案が通るわけもなくV字滑走路に落ち着きます。菅総理、枝野官房長官の時代です。枝野氏は、おまけに沖縄及び北方対策大臣も兼務されています。この二人は、現在立憲民主党の最高顧問と代表という立場で、辺野古移転に反対を表明しているのです。自らの役職で国際的な約束を結んでおきながら、立場が変わると手のひらを返したように態度を豹変させる。こんな政治家を信用するわけにいきません。
さて野田政権の時はどのような協議だったのでしょうか?やはり抜粋です。
〈仮訳〉日米安全保障協議委員会 共同発表 2012年4月27日
玄葉外務大臣
田中防衛大臣
クリントン国務長官
パネッタ国防長官閣僚は、運用上有効であり、政治的に実現可能であり、財政的に負担可能であって、戦略的に妥当であるとの基準を満たす方法で、普天間飛行場の移設に向けて引き続き取り組むことを決意する。閣僚は、キャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に建設することが計画されている普天間飛行場の代替施設が、引き続き、これまでに特定された唯一の有効な解決策であるとの認識を再確認した。
閣僚は、同盟の能力を維持しつつ、普天間飛行場の固定化を避けるため、普天間飛行場の代替施設に係る課題をできる限り速やかに解決するとのコミットメントを確認した。
両政府は、普天間飛行場において、同飛行場の代替施設が完全に運用可能となるまでの安全な任務能力の保持、環境の保全等の目的のための必要な補修事業について、個々の案件に応じ、また、在日米軍駐留経費負担を含め、既存の二国間の取決めに従って、相互に貢献するとのコミットメントを表明した。個別の補修事業に関する二国間の協議は、再編案に関する協議のためのものとは別のチャネルを通じて行われ、初期の補修事業は2012年末までに特定される。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/pdfs/joint_120427_jp.pdf(外務省)
あらら、防衛大臣は田中氏ではありませんか?アメリカ側も面食らったでしょうね。日本側は、米国閣僚に完全に舐められたと思います。
「これまでに特定された唯一の有効な解決策であるとの認識を再確認した。」米国から念を押されている感じです。「課題をできる限り速やかに解決するとのコミットメントを確認した。」早くやれよ。約束守れよ。とさらに念押しされているようです。
鳩山「辺野古確認」 → 菅「V字滑走路確認」 → 野田「念押し」
それなのに、現在、鳩山氏も菅氏も官房長官の枝野氏が代表を務める立憲民主党も国民民主党もそろって「辺野古移転」反対を大きな声で叫んでいるのです。無責任にもほどがあります。そう叫ぶのなら、まずご自身で米国に出向かれて「約束はなかったことにして」とお願いに行かなければなりません。
立憲民主党の方達は、このようなことが平気でできてしまうのです。どのような心臓をお持ちなのでしょうか?平気で自分が結んだ外国との約束を破る。どこかの国と同じ感性をお持ちのようです。
追記2021年3月20日)立憲民主党・原口氏のツイッターです。
「U.S. Military Forces in FY 2021: The Last Year of Growth?
— 原口 一博 (@kharaguchi) 2021年3月19日
March 18, 2021」(同レポート)普通の常識が有れば辺野古基地建設はNG。沖縄の思いからも安全保障上の見地からも。
私たちが闘っているのは、それでも強行しようとしている暴力とです。戦前と変わらない。負けるわけには行きません。 https://t.co/fzINEOqwbd
それに対する私のリプライです。
「最低でも県外」で迷走した辺野古移設を決めた2010年日米2プラス2の共同声明時の閣議決定時、原口先生は総務大臣としてサイン。枝野氏も行政刷新大臣でサイン。その後菅内閣、野田内閣でも日米2プラス2で推進しています。全員立憲民主党の役員ですね。
— 888moshi (@888moshi1) 2021年3月19日
自らの署名と戦っているのですね。
国民の代表の大臣として署名したのですから、アメリカとの約束を守るのが第一だと思います。状況が変わったと言うのであれば、まず謝罪して閣議決定を取り消す努力をしてからの話だと思います。それができないで、「反対」と手のひらを反して叫んでいるのが立憲民主党のみなさまなのです。