民主党政権3年3か月の研究

悪夢でした。二度と政権をとらせてはいけません。だから記録します。

◇日米地位協定の改定 玄葉外務大臣

沖縄の基地問題でもう一つ厄介な問題があります。日米地位協定です。正式には「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」で、在日米軍に施設や用地を提供する方法や、日本国内での米軍人の権利などについて定めています。

日米安保条約と同時に1960年に締結され、それ以来条文については改定されていません。米軍の治外法権を認める日本側に不利な条約として、改定は沖縄の悲願となっています。特に問題となる17条裁判権について本文をみてみます。

第十七条

 1 この条の規定に従うことを条件として、

  (a) 合衆国の軍当局は、合衆国の軍法に服するすべての者に対し、合衆国の法令により与えられたすべての刑事及び懲戒の裁判権を日本国において行使する権利を有する。

  (b) 日本国の当局は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族に対し、日本国の領域内で犯す罪で日本国の法令によつて罰することができるものについて、裁判権を有する。

 2 ・・・(略)

 3  裁判権を行使する権利が競合する場合には、次の規定が適用される。

  (a) 合衆国の軍当局は、次の罪については、合衆国軍隊の構成員又は軍属に対して裁判権を行使する第1次の権利を有する。

          (ⅰ) もつぱら合衆国の財産若しくは安全のみに対する罪又はもつぱら合衆国軍隊の他の構成員若しくは軍属若しくは合衆国軍隊の構成員若しくは軍属の家族の身体若しくは財産のみに対する罪

          (ⅱ) 公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪

  (b) その他の罪については、日本国の当局が、裁判権を行使する第1次の権利を有する。

  (c) 第1次の権利を有する国は、裁判権を行使しないことに決定したときは、できる限りすみやかに他方の国の当局にその旨を通告しなければならない。第1次の権利を有する国の当局は、他方の国がその権利の放棄を特に重要であると認めた場合において、その他方の国の当局から要請があつたときは、その要請に好意的考慮を払わなければならない。・・・(略)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/kyoutei/pdfs/17.pdf(外務省)

3(a)「合衆国の軍当局は、次の罪については、合衆国軍隊の構成員又は軍属に対して裁判権を行使する第1次の権利を有する。」

ここが、一番の問題とされるところですね。日本国内で犯罪を起こしても米国が裁判の権利を持っていると規定されています。

そして3(c)「その要請に好意的考慮を払わなければならない。」例えば、日本から犯人引き渡しの要請があれば、「好意的配慮」において米国が判断できるということです。これを頭に入れておくと記事の見え方が変わってきます。日経新聞です。

沖縄の交通死亡事故、米軍属を一転起訴へ  2011/11/25

沖縄県内で交通死亡事故を起こし、公務中だったとして不起訴となった米軍属の男性(24)について、那覇地検は24日、日本で裁判権を行使することで米側の同意が得られたと明らかにした。那覇検察審査会は男性を「起訴相当」と議決しており、地検は25日に自動車運転過失致死罪で起訴する方針。

地検によると、23日に開かれた日米合同委員会で今後の事件や事故について日米地位協定の運用改善で合意したのを受け、地検は男性軍属の事故についても「被害者が死亡した重大事案だ」として、日本が裁判権を行使できるようにするための米側の同意を得るよう法務当局に要請。

24日に例外的に米側の同意が得られたという。地検は「同意を踏まえて適切に対処する」としている。

遺族の支援者らは24日、県庁で記者会見。仲村未央県議は「普天間移設に絡めて世論を和らげる意図があるのならば、県民の怒りの火に油を注ぐものだ」と批判した。

事故は1月に発生。沖縄市の国道で男性の車が対向車線にはみ出し、会社員、与儀功貴さん(当時19)=愛知県東海市=の軽乗用車と正面衝突、与儀さんが死亡した。

日米地位協定は、在日米軍の軍属が公務中に事件や事故を起こした場合、米軍側に第1次裁判権があると規定。地検は「公務中だった」として3月に不起訴処分にしたが、遺族の申し立てを受けて審査した那覇検察審が起訴相当と議決。地検は期間を延長して再捜査していた。

地検は再捜査の結果、男性が公務中だったとあらためて認定していた。外務省によると、米側からは、男性の刑事訴追をしないとの通告があったという。〔共同〕

https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2404R_U1A121C1CC1000/(日経)

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米軍属裁判権、日本にも 公務中の事故、地位協定の運用見直し 2011/11/25

玄葉光一郎外相は24日、在日米軍で働く軍属が公務中に起こした事件・事故について、米国が刑事訴追をしなかった場合、日本で裁判できるよう日米地位協定の運用を改善することで日米両政府が合意したと発表した。交通死亡事故など重大なケースで日本側が米側に第1次裁判権を求め、米国の同意が得られれば日本で裁判できる。

https://www.nikkei.com/article/DGKDASFS2403G_U1A121C1MM8000/(日経)

 24日に玄葉外務大臣が米国側と協議、米国側が「好意的配慮」を示して合意したということです。写真はクリントン国務長官と。

朝日新聞には、玄葉外務大臣の合意を仲井真知事が評価とあります。

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 地位協定の運用見直しを評価 沖縄知事、玄葉外相と会談 2011年11月26

 玄葉光一郎外相は26日、沖縄県庁で仲井真弘多知事と会談した。玄葉外相は、在日米軍に勤務する民間米国人(米軍属)の公務中の犯罪で日本が裁判権を行使できるよう日米地位協定の運用を見直したことを説明。仲井真知事は「感謝する」と歓迎した。

 会談では、仲井真知事が「県民の中には地位協定の抜本的な改定という要求が強くある」と指摘。そのうえで、今回の運用見直しに「一歩一歩解決していただくのは大変ありがたい」と評価した。玄葉外相は「これからも事件事故、環境騒音の問題で全力を尽くしたい」と伝えた。

・・・(略)

 玄葉氏は「今回の1月のようなケースでは通常、好意的考慮が払われるものと思っている」と言及。今後も同様の事件事故では、日本側が裁判権を行使できるという見解を示した。

 一方、米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の移設問題では平行線のままだ。玄葉外相は「誠心誠意がんばっていきたい」と名護市辺野古への移設に理解を求めたが、仲井真氏は「その点は意見が違う」と述べ、改めて県外移設を求めた。

http://www.asahi.com/special/minshu/TKY201111260140.html(朝日)

条文の改定までの道のりは遠いですが、玄葉外務大臣の小さな一歩は評価してもいいと思います。民主党政権にあっては数少ない評価ですが・・・。

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