「沖縄の一括交付金は私が直談判した」
2018年9月のの沖縄知事選で当選した玉城デニー氏の発言です。この発言をデマだという噂が飛び、その真偽がネットで少し話題になりました。
たしかに地域自主戦略交付金=一括交付金制度は、2011年度に民主党政権ではじまり、2013年度に安倍政権において沖縄を除き廃止になりました。財務省の資料から沖縄の一括交付金の概要を紹介しておきます。さらに2011年度と2012年度の内訳を滋賀大学の機関誌に掲載の京都府立大学・公共政策学部・川瀬光義教授からお借りします。
府省・分野横断的な一括交付金について 2012年10月15日 財務省主計局
②沖縄振興一括交付金の創設
・沖縄県については、沖縄振興の重要性に鑑み、平成23年度予算において「地域自主戦略交付金」とは区分した「沖縄振興自主戦略交付金」を創設(321億円。なお、沖縄振興予算については、従来より内閣府に一括計上)。
・平成24年度予算においては、改正沖縄振興特別措置法のスタートを切る重要な年度であったことから、沖縄県の要望を最大限尊重し、沖縄独自の一括交付金を創設(1,575億円)。改正沖縄振興特別措置法に交付金の規定を明記。
▷経常補助金については、沖縄県の実情に即してより的確かつ効果的に施策を展開できるよう、市町村事業も含め、より自由度の高い交付金として内閣府が自ら執行する「沖縄振興特別推進交付金」を創設(803億円)。
(参考)同交付金の創設に伴い、従来の経常補助金は不発弾等処理交付金等を除き、原則廃止。▷投資的経費については、「沖縄振興自主戦略交付金」を全国制度である地域自主戦略交付金と同様に対象事業を拡充するとともに、沖縄独自に市町村向けにも一部対象範囲を拡充し、「沖縄振興公共投資交付金」として新たに創設(771億円)。
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia241015/03.pdf(財務省)
沖縄振興一括交付金の構造 - 滋賀大学経済学部 川瀬光義 京都府立大学 公共政策学部 / 教授
沖縄県に対する国からの予算・沖縄振興予算の推移を沖縄県のページからお借りします。2012年度から新たな交付金が積み重なり現状の3000億円に達していることがわかります。安倍政権になってからも、その水準を保っています。
http://www.pref.okinawa.jp/site/kikaku/chosei/kikaku/documents/q7okinawasinkouyosannosuii.pdf(沖縄県)
さて。玉城デニー氏の一括交付金の直談判に関する真偽はわかりませんが、玉城氏が国会で交付金について2011年6月に質問していました。そのやり取りです。
2011年年06月01日 衆議院・沖縄及び北方問題に関する特別委員会
○玉城委員 ありがとうございます。大体、夏ごろの概算要求までには取りまとめていきたいという方向性、大変うれしく思います。
しかし、他方でまた、多岐にわたる沖縄のこれまでの総括と、将来にわたる要望というものは大変多くございまして、その中でも、きょうは特に一括交付金についてさらにお伺いさせていただきたいと思います。
沖縄県から特に強い要望のある沖縄振興一括交付金制度の創設。これは、沖縄県からは、二千三百億円、今年度は振興経費で予算をちょうだいしているわけなんですが、それをさらに七百億円程度乗せて、三千億というふうな形で一括交付金を提案させていただいていることと思います。
その中では、この予算額の確保だけではなくて、使途の自由度の確保もあわせて県の方から要望が出ていると思いますが、その検討についてお聞かせください。
○枝野国務大臣 御指摘のとおり、沖縄振興一括交付金につきましては、金額にとどまらず、より使い勝手をよく、特に使途の自由度を高めてほしいという御要望をいただいております。これを踏まえて、全国ベースでのいわゆる一括交付金の制度設計も踏まえて、できるだけ前向きにと考えているところでございます。
過日、沖縄政策協議会の沖縄振興部会が開催されました折には、一括交付金全体を所管している総務大臣からも、沖縄については、特に一括交付金について、より先行した形で前に踏み出して進めていきたいというお話をいただきまして、私も意を強くしたところでございまして、総務大臣とも調整をして、できるだけ前に踏み出せるように進めてまいりたいと思っております。
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○玉城委員 普天間をやはり早く返すということが一番重要だと思うんですが、同時に、固定化は避けなければならないというのがまた県民の思いでございます。
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○玉城委員 ありがとうございます。ぜひ、基地のない島を目指す沖縄の県民の思いを酌んで、しっかりと進めていただきたいと思います。
「沖縄にお金くれてありがとう。自由に使わせて頂戴ね。」との話です。沖縄出身議員なら当然の質問だと思います。しかし毎年3000億円以上の交付金、国民の税金です。左から沖縄県庁、那覇市役所、龍柱。土建屋利権になっている感じも否めません。
さて、沖縄の一括交付金は、確かに民主党政権で成立しましたが、同時に「最低でも県外」で沖縄を混迷に追い込んだのも民主党です。玉城氏は、現在は小沢氏の自由党所属ですが、鳩山政権時に普天間移設を合意した時は民主党だったわけです。そのねじれを抱えながら沖縄県知事をされるのです。そのスタンスは「金をくれ、基地はいや!」、代案も出さずに、民主党政権時代のことをなかったことにして、住民投票やなんやかんやと辺野古移設阻止に奔走していますが・・・。
「最低でも県外」「一括交付金」のねじれについて、2013年の名護市長選挙に際して岡田克也氏が沖縄入りした時の記事が、その立場を良く表しています。
産経新聞です。
民主、何しに訪沖?平身低頭しつつ一括交付金を自賛 県連と溝埋まらず 2013.11.26
民主党の岡田克也前副総理らは25日、沖縄県庁を訪れ、民主党政権が創設した一括交付金の運用状況をめぐり仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事と意見交換した。だが政権時代に米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾=ぎのわん=市)の移設問題を迷走させた民主党に対し、県側は複雑な表情。同党は最終的に同県名護市辺野古への移設にカジを切ったが、県連は反対のままで、締まらない訪問劇となった。
訪沖したのは基地負担軽減や振興策を検討する民主党沖縄協議会(座長・大畠章宏幹事長)の幹部。
「普天間問題では県民の期待を高めながら、辺野古にならざるを得なかった。その反省に立っている」
会談で協議会顧問の岡田氏はこう語ったが、同時に「政権時代、沖縄にとってはいろんな意味で大きな転換点になったと思う」と続け、民主党政権が創設した使途の自由度が高い「沖縄振興一括交付金」を自画自賛してみせた。
岡田氏は普天間問題を混迷させた鳩山由紀夫政権時の外相。当時、防衛相だった北沢俊美顧問も同席しており、仲井真氏の心境は複雑だったに違いない。
「岡田、北沢さんに会えて懐かしいといってはあれだが、大変お世話になった。沖縄の基地はあれだが、それでもいろいろ取り組んでいただき感謝する」
奥歯に物が挟まったようなその言いぶりは、民主党批判に走りそうになるのを懸命に自制しているかのようでもあった。
会談には県連代表の喜納昌吉元参院議員も姿を現し、岡田氏が挨拶している間、ぶぜんとした表情を浮かべた。喜納氏は8日に那覇市内で記者会見し、来年1月19日投開票の名護市長選に関連し、普天間の辺野古移設について「選択肢になり得ない」と明言。辺野古への移設推進を掲げる党本部との「ねじれ」は解消されていない。
海江田万里代表は25日の記者会見で「県連と党本部の意向が違っているので、意見を統一していきたい」と語った。その沖縄県連は21日の常任幹事会で「私たちが活動するのは党のためではなく、沖縄のためだという意志を県民に伝える」として、名称を「沖縄民主党」に変更。党本部から距離を置く姿勢を鮮明にしている。(村上智博)
https://www.sankei.com/politics/news/131126/plt1311260018-n1.html(産経)
交付金に自画自賛している場合じゃないと思いますが・・・。その混乱の源はあなたなんですよ。民主党政権だったみなさんは、そこのところを忘れたふりしてるのです。