中国は、日本を揺さぶる手として「レアアースの対日米禁輸」を表明します。アメリカが対象になっているのは、前日のクリントン国務長官の「尖閣諸島は日米安保条約の適応範囲」との発言に反応しているのでしょう。AFP通信です。
中国がレアアース対日輸出を禁止か、尖閣問題で NY紙 2010年9月23日
【9月23日 AFP】(一部更新)米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は23日、東シナ海(East China Sea)の尖閣諸島(Senkaku Islands、中国名:釣魚島)付近で起きた中国トロール漁船と海上保安庁巡視船との衝突事件をめぐり、中国が日本へのレアアース(希土類)の輸出を全面的に禁止したと報じた。
NYT紙は、業界関係者の話として、中国がレアアースの輸出をすべて停止したと伝えた。
一方、中国商務省はこの報道内容を否定。同省担当官はAFPの取材に対し、「そのような事実はない」「NYT紙がどこから情報を得たのかわからない。すべて通常通りに行われている」などとコメントした。
7日に起きたトロール船と巡視船との衝突事件以降、日本と中国の外交関係は過去数年間で最悪の状態になっている。中国の温家宝(Wen Jiabao)首相は22日、訪問先のニューヨーク(New York)で、日本がトロール船の船長を「即時無条件」で釈放しなければ「さらなる措置」を取ると警告した。
国連総会(UN General Assembly)のためやはりニューヨーク入りしている前原誠司(Seiji Maehara)外相は、東シナ海に眠っているとされるガス田に近い尖閣諸島への中国の領有権主張を否定し、「領土問題は存在しない」と改めて強調した。
レアアースはiPodなどの電気製品や電気自動車、ミサイルなど幅広い製品の製造に不可欠な資源で、中国が世界の供給量の95%以上を占めている。中国は先にレアアースの輸出規制をしており、このためレアアースの市場価格が急騰して各国政府や企業が懸念を表明していた。(c)AFP
http://www.afpbb.com/articles/-/2758993?pid=6215610(AFP)
当時の日本はレアアースを中国に大きく依存していましたので、これが強力な切り札となってしまいます。しかしこれが契機になり、日本企業のレアアースに対する意識が大きく変わります。レアアースを使用しない技術の開発を進めたのです。2016年になって中国情報ポータルのサーチナがこのような報道をしています。
自らの首を絞めた中国のレアアース戦略、「日本に学べ」=中国報道 2016年12月22日
中国は希土類(レアアース)を重要な戦略資源に位置づけており、尖閣諸島(中国名:釣魚島)近海での漁船衝突事故をめぐって日中関係が緊張した際には中国はレアアースの輸出制限を行った。しかし、日本はレアアースを使用しない代替品の開発や調達先の分散を進め、レアアースの中国依存からの脱却を進めた結果、レアアース価格は下落し、中国は自分で自分の首を絞める形となった。
・・・(略)
https://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20161222/Searchina_20161222011.html#ixzz5TV2QCiEu(サーチナ・Excite)
日本企業は、ピンチをチャンスに変えて、また一歩強くなったのです。日本政府も中国政府も目の前の駆け引きだけにとらわれていて、長期視点に欠けていたということです。
中国政府は、さらに人質作戦をとります。AFP通信からです。
中国当局、フジタ社員4人を拘束か 2010年9月24日
【9月24日 AFP】日中関係が悪化する中、中国国営新華社(Xinhua)通信は23日、中国当局が、同国河北(Hebei)省の軍事管理区域で違法にビデオ撮影していた疑いで日本人4人を取り調べていると伝えた。
ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)米国務長官が、日本が中国人漁船船長を逮捕、拘置している問題について日中間の対話を求める中、4人の取り調べが明らかになった。
新華社は、「河北省の軍事管理区域に許可無く立ち入り、不法に軍事目標をビデオ録画した疑いで日本人4人を取り調べている」と述べ、中国治安当局が「法に基づいた措置を取っている」と伝えた。
共同(Kyodo)通信は24日、在北京(Beijing)日本大使館が日本人4人の取り調べを確認したと伝えた。
また、時事通信(Jiji Press)によると、日本の中堅ゼネコン「フジタ(Fujita)」は、社員4人が中国当局に拘束されているとの情報をつかんでいる。同社広報によると、少なくとも22日から4人と連絡が取れなくなっているという。
共同によれば、4人は第2次世界大戦(World War II)中に日本軍が遺棄した化学兵器を処分する事業に関連して、下見に訪れていた。
4人の取り調べにより、日中関係がさらに悪化する可能性が高いとみられている。
東シナ海(East China Sea)の尖閣諸島(Senkaku Islands、中国名:釣魚島)付近で起きた中国トロール漁船と海上保安庁巡視船との衝突事件で日本側がトロール漁船の船長を逮捕したことを受け、日中関係は悪化している。(c)AFP
http://www.afpbb.com/articles/-/2759088(AFP)
拘束された4名全員が、翌月解放され10月10に帰国した際の毎日新聞です。
中国河北省石家荘市で軍事管理区域に許可なく侵入したとして取り調べを受けた建設会社「フジタ」(東京都渋谷区)の日本人社員4人のうち唯一拘束が続いていた高橋定さん(57)が10日帰国し、同社で会見した。他の3人より解放が遅れたことについて、高橋さんは「私がビデオ撮影をしていたからではないか」と述べた。
冒頭、高橋さんは「国民の皆様に心配をかけ、申し訳ありませんでした」と緊張した表情で謝罪。帰国の感想を問われ「大変うれしく思っている。会社で妻や娘と会い、喜び合いました」と話した。
高橋さんらは先月20日、遺棄化学兵器の処理関連事業の調査のため訪れた石家荘市で、レンタカーから街の風景などを撮影し当局に拘束された。撮影をしていた高橋さんは、立ち入りを禁止する「軍事禁区」の看板に気付かなかったという。
高橋さんは「解放のあてがなく憂うつだった。もっと長くとどめられるだろうと思っていた」と、不安な気持ちを語った。3人が解放された後の取り調べについては「より好意的で、食事や運動などを勧めてもらった」と述べた。
会見に同席した土屋達朗取締役は、高橋さんの保釈保証金として5万元(約60万円)を中国当局に支払い、軍事管理区域と気付かず撮影したことについて始末書を提出したと明らかにした。
http://mainichi.jp/select/world/news/20101011ddm041030070000c.html(毎日・リンク切れ)
こうして、菅内閣は、一歩一歩追い詰められていきます。そして仙谷官房長官が蠢きはじめるのです。
実は、私も2001年からの上海在住時代に、街の写真を撮っていただけで警官に捕まったことがあります。数時間で解放されたものの、まだ中国語が満足に話せない頃だったので、めちゃくちゃ不安でした。理由は、撮影した小路が江沢民の住居につながる道だったからのようです。撮影禁止のサインくらいつけておいて欲しかったものです。でも、拘束直後江沢民の住居に少しだけ連れ込まれて、塀の中を見られたのはラッキーだったかもしれません。シンプルな洋館と玄関前のそんなに広くはない広場に、数多くの制服の軍人?がいたのが印象的でした。その後、夜中にその建物の敷地を囲む塀の周りを軍人が4-5人列をなして警備の行進をしているのを見ています。
話はそれましたが、今でも数多くの日本人が中国で暮らしています。しかし何かがおきると一気に人質として拘束されたり、敵として迫害される可能性があることをこの事件が教えてくれています。中国は経済発展して、日本と同じくらい快適に暮らせる国となりましたが、他国は他国です。それも共産主義の国です。中国本土にいる限りは、短い期間の観光であっても、日々緊張感を失ってはいけません。