◇中国船長の逮捕と釈放までの詰将棋
2010年9月7日、尖閣諸島北西の海域(日本領海)をパトロール中の海上保安庁の巡視船「みずき」が、不法に操業していた中国籍の漁船を発見、日本領海からの退去を命じたところ、漁船は逃走し追跡する2隻の巡視船に衝突。海上保安庁は、船長を公務執行妨害で逮捕、船員とともに石垣島へ連行し事情聴取を行います。9日に船長は那覇地方検察庁石垣支部に送検されます。
その後逮捕された中国船の船長は、那覇地検の判断により釈放され、中国へと帰国してしまうのです。
この事件が起きた当時、海上保安庁を所管する前原国土交通大臣は「日本の国内法に基づき粛々と対応する。それに尽きる」と発言しています。しかし、直後の菅第1次改造内閣で外務大臣に就任すると、仙谷官房長官にペースを握られ、船長の釈放に関しては、何もできませんでした。
しかし前原氏は、9月23日アメリカ訪問でクリントン国務長官と会談において、尖閣諸島について「日米安全保障条約は明らかに適用される」、米国の対日防衛義務を定めた同条約第5条の適用対象になるとの見解を引き出しています。これはグッドジョブです。
船長の釈放までの経緯を見てみると、詰将棋のようです。もちろん日本側が詰むことが決まっている詰将棋です。中国はを狡猾に一手一手を繰り出し、その度に日本の出方を注意深く観察しているのです。そして日本では赤い官房長官の仙谷氏が強引に日本を不利な状況へと誘導していくのです。
その駆け引きをまとめてみました。Wikipedia及びニコニコ大百科の尖閣諸島中国漁船衝突事件の項目を参考にしています。一部報道により加筆しています。
【中国人船長釈放までの経緯】 ▲・・・日本 ▼・・・中国
9/ 7 ▲海保の巡視船が、不法操業の中国籍の漁船を発見
漁船は追跡する巡視船に衝突し巡視船2隻を破損
9/ 8 ▲追跡の末、漁船を停船させる
船長を公務執行妨害で逮捕。乗組員と共に石垣島に連行し、事情聴取
▲検察側がビデオを官邸に届ける。
官邸は「致命的な瑕疵があり証拠にならず」と判断して隠蔽
▼中国大使館職員が船長に面会
▼中国政府は同日未明、北京在住の日本大使・丹羽宇一郎を呼び出し、
日本の対応に抗議すると共に、船員・船長の即時釈放を要求
この呼び出しはこの日より、断続的に5回繰り返される
9/ 9 ▲石垣海上保安部が船長を公務執行妨害容疑で那覇地検石垣支部に送検
9/12 ▼中国政府、丹羽大使に4回目の呼び出し
午前0時から1時間に渡る異例の抗議となる
9/13 ▲参考人扱いの船員14人全員を、中国のチャーター機で帰国させる漁船も解放。
9/14 ▲前原国土交通大臣が「尖閣諸島に領土問題は存在しない。
もとより日本固有の領土である」と発言
▲蓮舫氏が「領土問題が存在する」と発言、政権内の不一致が露呈
蓮舫氏はこの日「日本固有の領土である」と自身の発言を訂正
9/16 ▲前原誠司国土交通相は石垣海上保安部に行き、巡視船艇の係留所を視察
9/17 ▼中国大手日用品メーカーが計1万人の日本旅行を中止
9/19 ▲石垣簡裁が地検の請求を受け入れ、船長の拘留期限を29日まで延長
▼中国政府が日本への抗議として下記の4項目を表明
1.日本との閣僚級の往来を停止
2.航空路線増便の交渉中止
3.石炭関係会議の延期
4.日本への中国人観光団の規模縮小
▼中国国内の対日感情の急激な悪化で、SMAPの中国公演の中止が決定
9/23 ▲アメリカのクリントン国務長官が、前原外務大臣との会談において、
▲外務省職員が仙谷官房長官の了解のもと那覇地方検察庁へ出向き説明
9/24 ▼中国が、日本とアメリカへのレアアース輸出停止を表明
▼軍事管理区域に侵入容疑で、株式会社フジタの社員4名が中国当局に拘束。
▲午前10時、検察首脳会議が開催され釈放が決まる
▲那覇地検が、処分保留で船長の釈放を決定。
詰将棋よりは、難題をふっかけて民主党政権の出方をチェックしているテストのような感じもします。属国化への一次試験です。結果は、見事合格でしょう。
蓮舫氏も最初は中国に忖度して「領土問題が存在する」と発言しますが、問題となると「日本固有の領土」と手のひらを返します。お里がしれますね。日経新聞です。
蓮舫氏「尖閣諸島は領土問題」 発言後に修正 2010/9/14
蓮舫行政刷新担当相は14日の記者会見で、沖縄県の尖閣諸島(中国名・釣魚島)付近で起きた海上保安庁の巡視船と中国漁船の接触事件をめぐり、中国側が日本政府の対応を批判していることについて「(尖閣諸島は)いずれにしろ領土問題なので、私たちは毅然(きぜん)とした日本国としての立場を冷静に発信すべきだと思っている」と強調した。
蓮舫氏はこの後、自らの発言に関し、記者団に「誤解を与える表現があった。尖閣諸島は歴史的にも国際法上もわが国固有のものだ」と発言を修正した。
https://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1402A_U0A910C1PE8000/(日経)
大臣がこれですからね。この中で「毅然」「冷静」という言葉が出てきますが、民主党的には基本的に「こちらからは何もしない」の意だと思っています。2019年のレーダー照射問題でも「冷静な対話をするべきだ」などのマスコミの論説は「文句言うな、相手のことを思いやれ」と暗に主張しているに他なりません。その意味で蓮舫氏の答えは中国サイドから見ると合格点だったと思われます。
この事件、中国からすれば、このまま民主党政権が続けば、いつか属国化できると確信できた一次試験だったでしょう。民主党政権の幹部の皆さんも、中国からさぞやお褒めのお言葉やハニーを頂いたのではと想像しています。
国を売るってこういうことなんだ。それを確信した事件でもありました。