菅総理は、就任直後は内弁慶だったのですが、外交にも少し慣れたようで、カメラ写りを気に掛ける余裕ができたみたいです。が、2011年5月26~27日フランス・ドービルで開催されたG8サミットでとんでもない大風呂敷を広げてきました。産経新聞からです。
焦る首相「空手形」を連発 太陽光パネル1000万戸 原発事故の情報提供 2011年5月28日
【ドービル(フランス北西部)=酒井充】主要国(G8)首脳会議(仏ドービル・サミット)の閉幕を受け、菅直人首相は27日夕(日本時間27日深夜)の記者会見で「各国首脳と率直な意見交換をできる関係になったことをうれしく思う。首脳同士の関係が重要だ」と胸を張ったが、実際にはますます日本の信頼を貶(おとし)めた。首相が連発した太陽光パネル1千万戸設置などの「国際公約」は「空手形」だと見透かされ、各国首脳の反応は冷ややか。首相退陣論が強まっていることも知れ渡っており、もはや何も影響力を行使できないほど発信力を失った。
2度目のサミット出席に際し、首相は「カメラ写り」にやたらと気を配った。就任3週目の新参者として臨んだ昨年のサミットで休憩時間にポツリと1人でいる姿が写されたからだ。昨年11月の胡錦濤中国国家主席との会談ではメモを読み上げる姿を批判された。
今回は周到に準備したに違いない。会場内を移動する際はオバマ米大統領の隣を歩き、英語はほとんどできないのに身ぶり手ぶりで談笑。首脳会談の頭撮りや講演でもカメラ目線を忘れなかった。
首相は、福島第一原発事故が主要議題になったことを好機ととらえ、自然エネルギーの発電割合を2020年代早期に20%に引き上げる目標を掲げるなど新提案を連発したが、具体性はゼロ。「太陽光パネル1千万戸設置」も詳細に検討した形跡はない。枝野幸男官房長官は「具体的な段取りは精査して示した方が確実だ」と生煮えの構想だったことを認め、海江田万里経済産業相は「報道を通じて知った」と困惑した。
首相が常に「思いつき」と「その場しのぎ」のスタンドプレーを続けてきたことは各国首脳に見透かされている。
26日の首脳会議で、首相は原発事故について「最大限の透明性をもってすべての情報を国際社会に提供する」と宣言したが、その頃、日本では福島第一原発1号機への海水注入をめぐり政府と東電の説明が二転三転したことが大問題となっていた。日本政府の「事故隠し」を疑っている各国首脳は首相発言を「ブラックジョークだ」と失笑したに違いない
各国首脳はもはや「相手にできない」と見切ったのではないか。その証拠にオバマ大統領は、予定された今年前半の訪米をやんわり断った。「9月まで続投できたら来てもいいよ」と三下り半を突き付けられたのと同じではないか。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110528-00000086-san-pol(Yahoo産経・リンク切れ)
海外で大風呂敷を広げて既成事実にするのは民主党政権の常套手段です。鳩山政権時に気候変動サミットにおいて「90年比で25%」と日本の温室効果ガスの削減目標を国際的に公約しています。できもしない、検証もできていない大風呂敷を、単なる思いつきで国際的に約束してしまうのです。各国の反応は冷ややかだったようですね。オバマ氏にも距離を置かれてしまいました。落ちてしまった信用を取り戻すのには時間がかかります。民主党政権の3年3か月が災厄の一つに、国際的信用の低下が間違いなく挙げられます。
菅総理の場合、反原発を強力にアピールしてノーベル平和賞を狙っているという噂もありました。さもありなんですが、もう少し別の目的があったようですね。菅総理としては、再生可能エネルギー法案成立への布石のつもりだったのでしょう。
→◇太陽光パネルが山林を破壊する ①FIT法の爪痕 - 民主党政権3年3か月の研究
さらに週刊ポストでは、こう書かれています。
バカ総理のバカ計画「1000万戸に太陽光発電」は絶対あり得ない 2011.06.10
思いつきで“国際公約”するなど、もはや常軌を逸している。
菅直人・首相は5月のG8サミットで突然、「1000万戸に太陽光発電を設置する」と大風呂敷を広げて悦に入った。海江田万里・経産相が「聞いていない」と絶句し、後に仙谷由人・官房副長官が「夢は大きいほうがいい。『聞いてない』とかグチャグチャいわなくていい」と不真面目な言い訳で煙に巻くなど、またしても政府の体をなさない場当たり政治を露呈した。
ただし、このバカな思いつきは笑ってすませられるものではない。大きな問題点は4つある。第1に、そもそも政策として不適切だ。本誌はこれまでも太陽光発電による原発代替がいかに難しいかを科学的に分析してきた。
大臣すら聞いていなかった今回の計画は、菅氏に悪知恵をつけた経産省によれば「1戸あたり4kW×1000万戸=4000万kW」のパネルを設置するという計画で、これで“全原発の発電量の7割程度を家庭でまかなえる”ことになるという触れ込みだ。
もちろんウソである。原発が1基100万kW程度の「出力」であることは正しいが、「稼働率」が考慮されていない。原発の稼働率が現状でも(相次ぐ事故などで落ち込んでいるが)7割程度あるのに対し、太陽光パネルは12%しかない。したがって太陽光の4000万kWは原発に換算するなら6分の1(稼働率の比)に相当し、およそ6.7基分ということになる。
家庭用の4kWシステムの価格は約300万円なので、原発6.7基分を作るのに総額30兆円かかることになる。いくら脱原発が国民の願いだとしても、まともな政策とはとてもいえないのである。
さらにいえば、住宅はどんどん建て替えられる。パネルを常に1000万戸に設置しておくには、建て替えのたびに1戸300万円が必要で、これは未来永劫続く国民負担になる。
第2は、政治手法としての重大な問題だ。
国内で論議も提案もなく、突然、総理大臣が国際会議で「30兆円の公共事業計画」を約束してくることは暴走というしかない。もしこれが「30兆円かけて巨大ダムを300基造る」という話なら、マスコミはもっと叩いたはずだ。
第3には、憲法・法律に抵触する。
菅プランは一般家庭に政府が強制的に太陽光パネルを設置しようという前代未聞のものである。個人宅を勝手に徴用し、憲法が保障する財産権を侵す行為である。これも、もし「全家庭のベランダに小型発電機を置きますのでよろしく」という政策だったらどうかと想像すれば、異様さにすぐ気付くだろう。左翼独裁政権でもなければ、とても思い付かない暴挙である。これを「夢が大きくていい」などという人物が人権派弁護士を気取るとは驚きだ。
第4に、技術的に計画遂行は無理である。
前述のように、経産省の“試算”は、一部の太陽光信者と同レベルのデタラメな代物だが、その数字さえも現実を見ていない。
日本には2700万戸の民間住宅があるが、同省がそのうち1000万戸にパネル設置可能とした根拠は、耐震基準調査である。全家屋の約3分の1がパネル設置に耐えられる耐震基準を満たしているというのだが、裏を返せば3分の2の住宅は設置ができないわけで、それくらいパネルは耐震性を損なうものなのだ。
設置可能とされた1000万戸のうち、いくつで事故が起きるだろうか。すべてが無事故ということはあり得ない。現に、今でも耐震基準に問題ないとされた住宅がパネルの重みで歪む、あるいは地震で損壊する被害は出ている。
地震だけではない。日本の国土の約半分は豪雪地帯である(豪雪地帯対策特別措置法による)。耐震基準ギリギリの家屋にパネルを設置し、その上に雪が積もれば危険このうえない。また、そうしたパネルは1年の3分の1くらいは雪の下だから発電効率は前記の12%よりずっと低くなる。しかも雪の重み、低温、湿気などでパネルの損傷は他地域より激しい。
こんな問題だらけの計画を大威張りで発表する総理大臣のバカさ加減には、もはや付ける薬もない。
https://www.news-postseven.com/archives/20110610_22518.html(週刊ポスト)
とうとう週刊誌で「バカ」という直接的な誹謗表現が一国の総理に浴びせられています。もう世間では「バカ」としか形容しようがなくなっていたのですが、本人は気にもしていなかったのでしょう。解散権をちらつかせて、党内を「総選挙で落選」という恐怖の力で自らの存命を図るのです。