民主党政権3年3か月の研究

悪夢でした。二度と政権をとらせてはいけません。だから記録します。

◇新しい公共

また一つルーピー鳩山首相による新しい言葉が登場します。新しい公共です。

この「新しい公共」という言葉は、2009年10月26日に行われた、第173回国会における鳩山内閣総理大臣所信表明演説において語られました。

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その演説の該当部分を抜粋します。首相官邸のホームページからです。

(「新しい公共」)

 働くこと、生活の糧を得ることは容易なことではありません。しかし、同時に、働くことによって人を支え、人の役に立つことは、人間にとって大きな喜びとなります。

 私が目指したいのは、人と人が支え合い、役に立ち合う「新しい公共」の概念です。新しい公共とは、人を支えるという役割を、「官」と言われる人たちだけが担うのではなく、教育や子育て、街づくり、防犯や防災、医療や福祉などに地域でかかわっておられる方々一人ひとりにも参加していただき、それを社会全体として応援しようという新しい価値観です。

 国民生活の現場において、実は政治の役割は、それほど大きくないのかもしれません。政治ができることは、市民の皆さんやNPOが活発な活動を始めたときに、それを邪魔するような余分な規制、役所の仕事と予算を増やすためだけの規制を取り払うことだけかもしれません。しかし、そうやって市民やNPOの活動を側面から支援していくことこそが、二十一世紀の政治の役割だと私は考えています。

 新たな国づくりは、決して誰かに与えられるものではありません。政治や行政が予算を増やしさえすれば、すべての問題が解決するというものでもありません。国民一人ひとりが「自立と共生」の理念を育み発展させてこそ、社会の「絆」を再生し、人と人との信頼関係を取り戻すことができるのです。

 私は、国、地方、そして国民が一体となり、すべての人々が互いの存在をかけがえのないものだと感じあえる日本を実現するために、また、一人ひとりが「居場所と出番」を見いだすことのできる「支え合って生きていく日本」を実現するために、その先頭に立って、全力で取り組んでまいります。

https://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/statement/200910/26syosin.html(官邸)

何かもう一つ漠然としてわかったようで、わかりません。鳩山氏自身のホームページではこう述べられています。

新しい公共」とは・・・

新しい公共とは、支えあいと活気のある社会を作るためのさまざまな当事者たちの「協働の場」です。

1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災

6千人以上もの命が失われた大きな悲劇でしたが、行政も被災し企業や商店の活動が止まった地震直後の被災地で、人々の生活を支えたのは、被災者たち自身が自発的に作った即席の共同体、NGO/NPO、全国から集まったボランティアが作った「協働の場」でした。100万人以上も集まった被災地の支援者たちも、自分がいることで人の役に立ち、被災地からの感謝が自分の歓びとなり活力ともなったのです。

人は支えあうことで共に生きてゆけるのです。「居場所」と「出番」。それが「新しい公共」の原点です。

日本の目指す新しい公共

新しい公共とはけっして新しい概念ではありません。そもそも、日本に古来からさまざまな形で「支えあいと活気のある社会」を作るための知恵と社会技術がありました。公共はけっして官だけが担うものではなく、例えば教育制度でも、各地に藩校が置かれた一方で、1万5千校もあったと言われる寺子屋という民の教育システムがありました。火消しや身廻り組も組織されていました。茶の湯のような文化活動から経済が発展もしてきました。ところが、明治以降の近代国家への移行の過程で、「公共」=「官」という意識が高まり、国民が社会全体の中で役割を果たすという気概が希薄になってしまいました。そこで今、公共が民の中にあったかつてを思い出し、希薄になった気概を取り戻すため、「協働の場」を再構築したいと考えています。教育、文化、医療、福祉、介護、防災、防犯、環境、経済と言った分野において、私たち国民、企業やNPOなどの事業体、そして政府が協働することでよって、日本社会に失われつつある支えあいの心を取り戻すこと、それが「新し公共」の目的です。

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 http://www.hatoyama.gr.jp/newp ublic/(鳩山氏)

 

この所信表明を受けて、2010年1月27日「新しい公共」円卓会議が開かれます。官邸のホームページからです。

 新しい公共」円卓会議は、第173回国会における鳩山総理の所信表明演説に基づき、新しい公共という考え方やその展望を市民、企業、行政等に広く浸透させるとともに、これからの日本社会の目指すべき方向性やそれを実現させる制度・政策の在り方等について議論を行うことを目的としています。本日の会議では、今後の進め方等について話し合われました。

 鳩山総理は冒頭のあいさつで「新政権の神髄だと思っている新しい公共の思いというものを、ぜひ国民の皆様方と一緒に大きく日本社会の中で位置付けていただきたい、その思いの下でこのような円卓会議をつくらせていただきました。ぜひ皆様方にも率直なご意見をいただきながら新しい公共の肉付けと、それが日本の新しい社会の中での息吹になるようお願いしたい。」と述べました。

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https://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/actions/201001/27entk.html(官邸)

 この会議を受けて、2010年2月10日新たに内閣府特命担当大臣新しい公共担当が設けられ、仙谷由人氏が就任します。それまで仙谷氏が担当していた内閣府特命担当大臣・行政刷新担当、行政改革担当大臣に枝野幸男氏が就任して入閣します。

 

日本人の持つ「助け合いの精神」を行政として具現化するという構想のようです。このような抽象的な概念を、無理矢理にでも何とかしようとする情熱は認めようと思いますが、どのような成果が上がったのかは、よくわかりません。あやしいNPOにおカネを流すだけなのではないかと勘ぐってしまいます。なんせ「コンクリートからお友達へ」の民主党政権ですから。

皮肉にもこの後起こる東日本大震災において、危機管理が十分にできない民主党政権を救ったのは、被災地の皆さんの助け合いの精神でした。鳩山氏が「新しい公共」と軽々しく語るより、もっと深い精神力を日本人は持っているのです。

この後、民主党政権ではこのポストは継承されますが、安倍政権において廃止されます。

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